次第に暴走し始める妹

「最初のうちは」と前置きしたのは、次第に妹の暴走が目立つようになったからです。

父は3年前から老人ホームに入居していました。私も見舞いに行きましたが、実家に近く、衛生環境も配慮され、また、スタッフも介護の仕事に前向きに頑張っておられる方ばかりで、父はいいホームに入れて良かったなと思っていました。

ところが、里心がついた父が妹に「家に帰りたい。家で死にたい」と洩らしたとかで、それを真に受けた妹が2年前に突然、「お父さんを家に連れて帰る。私が面倒を見る」と言い出したのです。

さすがにそれは無理だろうと、私も、父の担当のケアマネジャーさんも散々止めたのですが、妹は「父の意思だから」と半ば力ずくで父をホームから自宅に連れ帰りました。そして、義弟(妹の夫)を自分の家に残して、空き家になっていた自宅で父と暮らし始めたのです。

当然ですが、介護のプロでもない妹が要介護の父を24時間見ることなどできるはずもありません。案の定、10日もたたないうちに「全く仕事ができない」と音を上げました。

だからといって前のホームにすぐに戻れるはずもなく、ケアマネさんが新しい介護施設を探し直してくれることになりました。

ケアマネさんから私に直接連絡があったのは、それから3週間ほど後のことでした。

「なつみさんにお父さまの入居先の候補を何件かお送りしたのですが、『費用が高過ぎる』、『私の自宅から遠過ぎてとても通えない』という理由で、なかなかOKをいただけないんです。今はショートステイやデイサービス、訪問介護などで何とかつないでいますが、お父さまもスタッフがくるくる変わってとまどっていらっしゃいます。お父さまのためにも、早めに入居施設をお決めになった方がよろしいかと思います」