三菱重工はなぜ好調? 共同開発エンジンで明暗

利益面も確認しておきましょう。総合重機の案件は長期にわたるものが多く、一般に受注から売り上げに計上されるまで時間がかかります。今期に受注が好調でも、すぐに利益が拡大するわけではありません。

もっとも、三菱重機は利益も高水準でした。今期(2024年3月期)の純利益は前期比45%以上増加の1900億円を見込んでいます。これは過去最高益とみられています。

対照的に競合は苦戦しました。川崎重工は77%の最終減益、IHIは900億円の純損失を見込んでいます(前期は445億円の黒字)。株価も明暗が分かれており、三菱重工株式の値上がりは同業2社を大きく上回っています。

【大手総合重機3社の純利益】

        2023年3月期   2024年3月期 
(予想)
 三菱重工業 1304億円 1900億円
 川崎重工業 530億円 120億円
 IHI 445億円 -900億円

※2024年3月期(予想)は同第3四半期時点の各社の予想

出所:各社の決算短信(三菱重工業(外部リンク)、川崎重工業(外部リンク)、IHI(外部リンク)

利益に差が生じた原因の一つが共同開発エンジンの参画割合です。

三菱重工と川崎重工、IHIの3社は米P&W社が主導する航空エンジン「PW1100G-JM」の開発事業に共同で参画しました。このエンジンで不具合が見つかり、搭載した航空機で点検や交換などの費用が発生することが明らかとなっています。

P&W社の親会社は2023年9月、損失見込み額が開発事業全体で70億ドルに上ると発表しました。開発に参加した三菱重工らも、参画割合に応じ損失を負担することとなりました。

最も参画割合が大きかったのがIHIです。15%のシェアで参画しており、2024年3月期に1600億円の損失を計上します。同5.8%の川崎重工は580億円の損失を、国内3社で最小の三菱重工(同2.3%)は200億円の損失を同じく2024年3月期に計上する見込みです。

このような経緯から、三菱重工の損失は他2社と比較し限定的でした。株主の利益を大きく残すことができ、株式市場での評価につながったとみられます。