公的年金に対する不正確な言説に惑わされない

ここまで述べてきた方法に対しては、「少子高齢化で公的年金は将来破綻したり額が激減したりする可能性が大きい。長生きリスクを公的年金に委ねていいのか」と心配する人も多いかもしれません。

年金財政はかなり理解が難しく、テレビや週刊誌などで、きちんと年金を理解していない大学教授や社会保険労務士、評論家などが、「将来の基礎年金は受給初年度でも月3万円に減る」「支給開始年齢は今後一律に引き上げられる」など、根拠のない年金不安をいまだに声高に話し続けています。しかし、これらははっきり間違いと言えます。

少子高齢化は数十年も前からわかっていましたから、公的年金財政では、①基礎年金への税金投入比率を半分から3分の2への引き上げ、②2017年度まで続けてきた年金保険料の引き上げ、③少子高齢化にあわせて給付をじわり減らすマクロ経済スライドという仕組みの導入、④年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)による運用(2022年度までに運用益は計108兆円にも達します)―などかなりの手当てをすでに講じています。

もちろん財政が厳しいのは事実ですから、今後もマクロ経済スライドの適用強化や基礎年金の加入期間の延長など様々な対策をとり続けるべきで、国民としてもそうした対策を後押しすべきです。しかし、年金財政が破綻したり将来の金額が激減したりする状況にはなっていません。

2019年の年金財政検証の結果を分析すると、将来の年金支給額は厳しめの経済前提の場合でも、65歳から100歳までの総受給額は現在の物価に換算して、現在の支給開始年度の額に比べ1割強くらいの減少にとどまる見通しです。逆に言えば、だからこそじわり減少する分はNISAやイデコでしっかり備えるべきです。

また、支給開始年齢の一律引き上げは、一定年齢から下の若い世代にだけ不利益が及ぶことになります。現在の受給世代にも受給減という負担をしてもらうマクロ経済スライドの方が公平であるからこそ、支給開始年齢の一律引き上げは現在、政府内で検討されていません。

【間違い】
少子高齢化で公的年金は破綻したり激減したりする

年金については、こうした根拠のない言説を信じるのではなく「正しく心配する」ことが大事になってくるのですが、本書ではページ数の関係からその点を詳しく述べることができません。年金の財政検証の読み方を詳しく知りたい方はぜひ拙著『人生100年時代の年金・イデコ・NISA戦略』(日本経済新聞出版)を読んでみてください。

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