DCガバナンスの視点から受託者責任を果たす目的で、投資信託のモニタリングや入れ替えを検討・実施する企業も少しずつ増えています。そこで、投資信託のモニタリングに役立つDC商品マーケットの最新状況を、投資信託評価会社である三菱アセット・ブレインズの標氏に解説していただきます。

※この記事は、2024年1月25日(木)に実施したWEBセミナー「最新DC 投信マーケット解説 2024年1月号」を記事化したものです。

——早速2023年10月~12月のDCマーケット状況について伺いたいと思います。まずはアセットクラスごとのパフォーマンスをお聞かせください。

まず、こちらのグラフをご覧ください。図1は過去2年間のファンド分類別の累積パフォーマンスを示したものです。

図1 分類別累積パフォーマンス 拡大図表示

出所:三菱アセット・ブレインズ

過去2年間で最もパフォーマンスが良かったのは、国内株式型です。2023年は国内経済の脱デフレ・賃上げへの期待や米国の著名投資家による日本株投資の表明、東京証券取引所による資本コストを意識した経営の要請など複数の要因から、海外投資家を中心に買いが強まり大幅に上昇しました。

外国株式型も同様に、良好なパフォーマンスとなりました。2022年は米欧の中央銀行による急速な金融引き締めにより、外国株式型のパフォーマンスが軟調となりましたが、2023年に入ると利上げが見送られる月もみられ、2024年以降の利下げ観測も高まると、回復に転じました。

他方、国内債券型および国内リート型のパフォーマンスはマイナス圏に沈んでいます。国内では日銀の金融緩和政策の修正観測が高まっており、マイナス金利の解除時期に注目が集まっています。2023年12月~翌年1月に解除を予想する声もあったことから金利上昇圧力が強まり、国内債券にとってマイナスとなりました。

国内リート型も同様に、金利上昇によってリートの利回りの魅力が相対的に低下したことや、物件借り入れコストの上昇が警戒されました。

次に分類別に直近3カ月のパフォーマンスランキングを確認します(図2)。

図2 分類別パフォーマンス 拡大図表示

出所:三菱アセット・ブレインズ

2023年10月にパフォーマンスが唯一プラスとなったのは、その他資産となりました。イスラエルとイスラム組織ハマスとの衝突により地政学リスクが高まったことから、金関連ファンドが上昇しました。株式ファンドや債券ファンドは地政学リスクに加え、長期金利の高止まりなどから下落しました。

11月は、外国リート、外国株式が大幅に上昇しました。FRBパウエル議長のハト派的な発言を受け、金融政策の転換・利下げに対する期待が高まったことが影響しました。12月も同様の流れを引き継ぎ、外国リート、外国株式が上昇しました。

以上のとおり、中東情勢の悪化による地政学リスクの高まりは一部マイナスとなりましたが、米FRBの金融政策の転換が意識され長期金利が低下し、外国リート、外国株式を中心にパフォーマンスは回復しました。

パフォーマンス動向の説明については以上です。