配偶者のNISA口座を使う場合の注意点

ところで、9万円のインカム収入が得られる上記のシミュレーションは、あくまでも1人分の新NISA口座を想定したものですが、生計を共にしているパートナーがいるならば、同じ条件で2人分、つまり月18万円のインカム収入を得ることもできます。

ただし、1つだけ注意しなければならない点があります。それはパートナーのどちらかが働いて得た収入を、2つの口座に分けて新NISAで運用する場合です。たとえば専業主婦(主夫)家庭で、一方が働いて得た収入の一部を、もう一方のNISA口座に入金すると、贈与税が課せられる可能性があります。

また、いずれか一方に投資の知識がないからといって、もう一方の判断で投資を実行すると、「名義貸し」という違法行為になるので注意が必要です。

特に贈与税については注意した方が良いでしょう。ただし贈与税には暦年ベースで年110万円までの基礎控除が認められていますから、この範囲内で行われた贈与に関しては一応、贈与税はかからずに済みます。

とはいえ2024年1月1日以降の贈与については、贈与を受けた財産のうち相続開始前7年以内に行われた贈与は、たとえ110万円の基礎控除内の金額であったとしても、相続税の課税価格に加算して相続税が計算されてしまいます。

つまり贈与税は基礎控除の適用を受けられたとしても、贈与されて7年が経過する前に相続が発生した場合は、相続財産に加算されてしまうのです。せっかく新NISAで運用益が非課税になったのに相続税で持っていかれては、何のための非課税運用なのか、分からなくなります。

個々人の状況にもよりますが、できるだけ自分が働いて得た収入の一部で、新NISA口座を通じた運用を行うようにしてください。

参考
・国税庁「令和5年度相続税及び贈与税の税制改正のあらまし」