DC制度開始から22年が経過

2002年の確定拠出年金(DC)制度開始から20年超が経過しました。

スタート当初からしばらくは、運用環境も悪くなかったため、投資を前向きにとらえる加入者も存在していました。ところが2008年のリーマンショックをきっかけに株式市場は大暴落し、日経平均で約40%、米国のダウ平均株価で54%も下落しました。企業型DCの事業主のなかには、その当時の元本割れの記憶が鮮明で、いまでも話題に上ることが多い内容です。「なぜDCを始めたんだ、と社員から文句を言われたこともありますよ」と。

しかし、その当時に投資信託の購入を停止せずに継続してきた方は、現時点でかなりの運用実績になっています。時間分散の「値段が安い時にたくさん買える効果」を実践してきた、と言えます。

投信割合は増加傾向だが、一歩を踏み出せない層も

いまから振り返ってみれば、デフレ下ではリスクを取らずに元本を確保する姿勢は、理にかなった行動だったともいえます。

しかし、DC加入者のうち、その後の環境変化にあわせて投資行動を変えることができたのは、ごく少数です。加入者の多くは、掛金の資産配分割合を変更したことがありません。加入者になった時(DCがスタートした時、もしくはDCのある企業に入社した時)の資産配分のまま、運用商品の変更をできるという認識もない方も多いようです。

また、運用商品を変更できる、という認識はあっても、一歩を踏み出せない人もいるようです。なかには「いまさら投資信託でリスクを取っても、タイミングとして遅いのではないか」と考える既存の加入者も存在しています。これまでに、リスクを取ってきた人と比較して、資産残高が増えていないことは意識しつつも、「いまさら」と考えてしまうようです。

一方で、DCの投信割合は年々増加しています。2020年3月時点ではDC資産に占める投信の割合は48.1%でしたが、徐々に増加して2023年3月末では59.8%となっています。逆に、元本確保型のみへの配分者は減少し、2020年3月末の34.1%から2023年3月末の26.9%へと減りました(※2)

投信割合の増加理由は二つ想定できます。一つは、株価の上昇によって相対的に割合が増えたというものと、もう一つが最近、加入者になった人の投信配分の増加です。そのため、企業型DCの担当者の中には、「若年層はリーマンショックを知らないから、大きな下落に直面した時に慌ててしまうのではないか」「元本割れした時のスイッチングは、運用損が確定してしまうということを伝えたほうがいいのではないか」と考えている人もいるようです。
※2 「確定拠出年金統計資料(2023年3月末)」運営管理機関連絡協議会

冒頭に過去の市場環境を振り返ったように、株価や為替は大きく変化します。将来のことは誰にも予測できません。

下がることもあれば上がることもある。ただ、だからこそ積立投資を続けられる環境を整えることで、いつの間にか資産形成ができる仕組みを整えることが重要といえます。