投信販売のシェア半減、2024年からの巻き返しはあるか

1998年12月に銀行での投資信託販売が解禁されてから25年が経った。2000年代は公募株式投信の残高で証券会社に迫る時期もあり、ピーク時の2007~2008年には30兆円を超える残高となった。しかし、ネット証券の勢いでシェアはピーク時の半分にまで減少(40%台前半→20%台前半)。ただ、2024年から始まる新NISAによって「貯蓄から投資へ」の流れが強まる中、銀行は対面営業を強化したり、商品の絞り込みを行ったりして販売力を向上させている。

銀行と証券の明暗を分けたのが2008年のリーマンショックである。銀行、証券ともに投資信託の純資産残高を大きく減らしたものの、証券会社は2011年までにリーマンショック前の水準を回復、2023年は株高もあり140兆円台まで公募株式投信の純資産残高を伸ばしている。

とくにネット証券は、S&P500種株価指数など株価指数に連動するインデックスファンドを中心に残高を伸ばしている。ネット証券で人気の「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の純資産残高は2兆8778.15億円で、公募株式投信(ETF除く)の中で純資産残高1位、「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」の純資産残高は1兆6854.1億円で公募株式投信(ETF除く)の中で第3位となっている(11月末時点)。

しかし、銀行ではリーマンショック時に損失を抱えたまま顧客が戻らず、2023年も30兆円台とリーマンショック前と同水準にとどまっている。ただ、三井住友銀行は顧客の家族構成や資産状況に応じて適切な商品を販売し、グループ内の証券や信託銀行との人事交流を通じて提案力向上に努めている。また、りそなホールディングスは2019年にりそなアカデミーを立ち上げ、住宅ローンや相続などの相談にも対応できるように研修している。

今後は、資産形成にとどまらない相続などの悩みに対応できるかどうかが大切になってくるだろう。

三井住友トラスト・アセットが成功報酬型の投資信託を設定

11月27日から、三井住友トラスト・アセットは「SMT iPlus」という新しい投資信託の販売を開始した。この投資信託は、信託報酬が0.055%(年率・税込)と低水準となっている。信託報酬は投資信託を保有している間、継続的にかかるコストである。とくに長期運用を考えた場合、信託報酬が低いファンドを選ぶことは、運用成果の向上に直結する。ただ、この商品の特徴としては、運用成績がインデックスを上回った場合、超過分の33%(税込)を成功報酬として徴収する点である。

超過収益は四半期ごとに計測。成果報酬は、設定来と四半期の運用成績がベンチマークとするインデックス(指数)を上回った場合にのみ発生する。成功報酬の上限は最大1.1%(税込)となり、運用成績がインデックスを下回った場合は成功報酬が発生しない。最初に、米国株と世界株に投資する以下のアクティブ型投資信託2本が投入され、その後、商品数を順次増やす予定としている。

 

インデックスファンドに比べて保有コストである信託報酬が高いアクティブファンドの残高は伸び悩んでいる。そこで、信託報酬をインデックスファンド並にすることで、コストに敏感な投資家もアクティブファンドを購入するきっかけを作ることが狙いである。ただ、ハイリスク・ハイリターンのヘッジファンドなどでは成功報酬型が浸透しているものの、これまで公募投資信託での成功報酬型は少ない。

運用がうまくいけば成功報酬が発生し運用会社の利益も増えるだろうが、運用者であるファンドマネージャーが過度なリスクをとっていないかなど、運用管理のチェック態勢の強化も必要だろう。