MBOで株式の売却は必須?

ところで、MBOに応じる、応じないは投資家の自由意思に委ねられます。応じる場合は、買収プレミアムを上乗せした株価で売却できますが、中には買収プレミアムに納得ができないなど、さまざまな理由で応じないというケースもあります。

この場合、たとえばMBOを行う経営陣が議決権の3分の2以上を取得できれば、「スクイーズアウト」と言って、残り3分の1の株主から強制的に株式を買い取ることができます。

スクイーズアウトを実施しないまま、非公開化された株式を保有し続けている場合であっても、株主としての権利は当然、守られます。

株式が上場廃止されるとなると、その株式の価値そのものがなくなると誤解している人も少なくないようですが、株式の非公開化によって株式の価値が損なわれることはないので安心してください。

ただ、いくつかの点において、上場株式とは勝手が違ってきます。

たとえば上場廃止されると、株式市場で自由に株式を売買することができなくなります。資金需要が生じた時、証券会社を通じて即、売却して現金を手に入れることが困難になるのです。

加えて、企業の経営状況を把握するのが困難になります。言うまでもなく企業は、株式を公開していることが前提で、有価証券報告書などさまざまな開示書類を作成し、第三者の閲覧に供しているからです。

とはいえ、上場廃止した企業がそのまま株式の非公開化を続けるかというと、決してそのようなことはありません。

たとえば2014年にMBOを実施して、株式を非公開化した電子楽器大手のローランドは、工場の整理統合といった経営改革を断行し、2020年には当時の東証1部市場(現在のプライム市場)に再上場を果たしています。売上高は上場廃止前に比べて倍増し、PBRも3倍近くとマーケットから高い評価を得ています。

再上場されれば、再び株式市場を通じて自由に売買できるようになるので、上場廃止になるからといって慌てる必要はないのです。

参考
・日本取引所グループ「『資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応』に関する開示企業一覧表の公表等について」