このところ立て続けに、上場企業がMBOを行い、株式を上場廃止にするという報道が増えています。特に11月は、大正製薬ホールディングス、ベネッセホールディングス、シダックス、ツルハホールディングスなど、知名度の高い上場企業がMBOを実施し、株式を上場廃止にするという報道が相次ぎました。
MBOとは?
MBOとはManagement Buyoutの略称で、企業の経営陣が金融機関や投資ファンドなどから資金を調達し、既存の株主から株式を買い取ることです。
ただ、買い取るといっても、当たり前のことですが、無条件で既存株主が「はい、そうですか」などと言って株式の譲渡に応じることはありません。既存株主は皆、それぞれの期待感を持ってその企業の株式に投資しています。そのため、現在の株価に対して一定の買収プレミアム、つまり株価を上乗せして買い取ることになります。
たとえばベネッセホールディングスは、MBOを実施するにあたって、1株あたりの買い取り価格を2600円としましたが、11月10日にMBOを発表した時の株価は、終値で1908円でした。この差額である692円分が買収プレミアムになります。
上場することによる企業のメリット
多くの企業経営者は、起業した以上、自社の株式を上場させたいと考えるのが普通です。中には「上場ゴール」などと言って、上場そのものが目的化しているようなケースも見られますが、株式を上場させることによって、さまざまな経営上のメリットが得られます。
たとえば、上場すれば資金調達力が高まります。非上場の段階では、ほぼ銀行融資とベンチャーキャピタルからの出資に頼らざるを得ませんが、株式を上場させれば、証券市場を通じて不特定多数の投資家から資本を調達できます。
また、社内的には管理体制がしっかりするという副次的効果が得られます。なぜなら株式を上場させるためには、証券取引所の審査を受けなければならず、その審査基準のひとつに、「企業のコーポレートガバナンス及び内部管理体制の有効性」という項目が設けられているからです。
つまり株式を上場できたということは、それに応じた社内管理体制を強化させる必要があり、第三者的にも「ちゃんとした企業」という評価を得られます。
その結果、企業の知名度が上がり、従業員のモチベーション向上と人材確保につながります。昨今、特に人手不足による人材確保に苦労している企業も多いので、この点は非常に魅力的でしょう。
そのため、確かにMBOによって株式の非公開化を目指す企業もある一方、株式を上場したいと考えている企業が多いのも事実なのです。