嫁に甘える義家族たち

義父の遺産はほとんどなかった。最終的には義弟、義妹は相続を放棄した。

「夫は、『土地をもらったんだから弟妹に100万円くらいずつ渡さないといけない』と言うので、『それなら義母の介護を手伝ってよ!』と思いました。義父は義妹がマンションを買うときに費用を出してあげています。特別寄与料制度については知っていましたが、もしも特別寄与料をもらったら後々義家族たちから文句を言われるのが目に見えているので諦めました……」

要介護3になった義母は時々七瀬さんの悪口を義妹に吹き込んでいるらしく、七瀬さんは度々義妹から電話で責められていた。魚や肉が嫌いな義母のために、七瀬さんは卵や大豆製品を使った料理を工夫して出していたのに、先月義妹から、「自分たちばかりおいしいもの食べてないで、おばあちゃんにも食べさせてあげなさいよ。かわいそうでしょう」と言われた。

七瀬さんが事情を説明しても耳を貸さないため、「じゃあ義妹さんが何かおいしいものを作って送ってください。お義母さんも嫁より娘の料理を食べたいでしょうから。あっ、それよりお義母さんをそちらに連れて行ったほうがいいか!」と七瀬さんが言うと、義妹は激怒。

「親をみるのは実子の責任ですよね。私には相続権はないのですよ」と言うと、「えっ? お金が欲しいの? 浅ましいね。お金をもらわないと面倒みないの? ひどいねー! おばあちゃんかわいそう。考えが最低だね」とまるで小学生のけんかだ。

七瀬さんは、「自分は義父からお金を奪っておいてよく言うわと思います」と憤慨する。

子どもたちは家事を手伝ってくれた。長男は現在も、時間があるときは手伝ってくれる。しかし七瀬さんが体調を崩したとき、夫から「お前は肝心なときに体調を崩す」と言われ、七瀬さんは病院に行きそびれてしまったことがあった。

長女は「ひどいね」と言って話を聞いてくれるほか、「後少し頑張れば年寄りは死ぬんじゃない?」と励ましてくれる。70代の実父は、「自分も同じように歳をとるのだから、頑張ってみてやれば後悔しないんじゃないか」と言い、実母は「いつでも帰ってきていいよ」と言ってくれている。