<前編のあらすじ>
テレビ局に勤める深沢裕子(43歳)は、連ドラのプロデューサーとして歴史に残るドラマを制作するのが夢だった。その夢を実現するため、キャリアの大きな節目になる30代前後の年齢を仕事優先で過ごしたかった。夫の直樹(43歳)も裕子の仕事に理解があり、夫婦で話し合って子供を持つのはお互いのキャリア形成にメドがたってからと話し合って決めた。ところが、妊活を始めても一向に妊娠の気配はなく……
●前編:「二度と経験したくない」キャリア優先のため妊娠を先送りした40代夫婦“妊活”の試練
まずは自然妊娠を目指して
裕子は基礎体温を毎日チェックし、基礎体温を記録して生理周期を可視化するアプリを直樹と共有した。そして、二人とも規則正しい生活を送るようにし、夕食の時間もできるだけ同じような時間になるように心がけ、残業などは極力回避した。また、不足しがちだという栄養素の葉酸やカルシウム、鉄分などはサプリメントで補うようにし、生殖機能を健康に保つために役立つといわれる亜鉛は二人でサプリを飲むようにした。さらに、裕子は身体を冷やさない方が良いという情報に基づいて、腹巻きをするようになり、毎晩のようにぬるま湯に30分以上つかる半身浴をするようにした。
裕子にとっては、このタイミングを逃すと、ドラマ班に戻った時に思い切り仕事ができなくなってしまうという危機感があったため、できることは全て取り入れた。身体を温めるためにハリを打つのがいいと聞くと、ハリ治療も受けてみた。ところが、半年たっても妊娠の兆候はなかった。30歳で自然に妊娠したことがあったため、二人で協力して妊娠しようと努力すればすぐにでも妊娠できると考えていただけに、半年を過ぎると毎月の妊娠判定に対するプレッシャーが非常に強くなった。
妊娠に不向きな体質に変わってしまった
もはや生理周期に合わせて妊娠しやすい日にベッドをともにすることすら気が重くなってきた。そこで、不妊治療で評判の高いクリニックを訪ねて検査を受けたところ、裕子に排卵障害の疑いがあることに加え、直樹には造精機能障害があると診断された。夫婦そろって妊娠には不向きな体質になってしまっていたのだ。その後、医師の指導の下で生活習慣の見直しやサプリメントの使用を行ったが、結果として妊活を始めて2年が経過しても妊娠には至らなかった。
その結果を受けて、二人で話し合った結果、人工授精を行うことにした。受精卵の冷凍保存を行った時に、二度と同じことを繰り返したくないと二人で話したが、自然妊娠が難しいと診断されたため、もう一度、人工授精にトライすることにした。洗浄・濃縮した夫側の精子を、妻側の排卵の時期に合わせて子宮内へ注入するという人工授精の費用は1回あたり3万円ほどになった。3回繰り返したが、裕子には妊娠の兆候が現れなかった。
次に、体外受精にトライした。検査から全工程を終えるまで70万円を超える治療費を請求された。しかし、この治療を行ったものの、受精卵が子宮に着床しなかったため妊娠できなかった。