フィリップ・フィッシャーは「成長株投資の父」と呼ばれる銘柄発掘の名手です。モトローラやダウ・ケミカルなどに投資し膨大な利益を稼ぎ出しました。著名投資家のウォーレン・バフェットも影響を受けたといわれています。

成長株投資なら新興企業も候補に挙がりそうです。しかしフィッシャーは創業間もない企業には投資しないといいます。

フィッシャーがスタートアップに投資しない理由

どれほど能力が高い投資家でも、実績のない会社を評価するのは、既存の会社を判断する場合の「平均打率」と比べれば、その何分の一かの精度にすら達しない。売り出し中の若い会社は、大きく成長する過程のある段階まで、素晴らしい才能を発揮する1人か2人の人間を中心に動いているが、会社としてそれと同じくらい不可欠な才能ある人材が欠けている場合がほとんどだからだ。

引用:フィリップ・A・フィッシャー 『株式投資で普通でない利益を得る』パンローリング

フィッシャーは、若い会社は有能な人物が率いているが、組織に必要なその他の人材に不足しているケースが多いと指摘します。そういった企業の評価は難しく、普通の個人投資家には向かないと助言します。

対して既存の企業はすでに組織に必要な部門が機能しており、情報も比較的集めやすいともフィッシャーは言っています。銘柄の選別に労力を向けるなら、新興企業よりも既存企業の方が成果を得やすいのかもしれません。

未公開株式への投資は特に注意

どれくらいの年数がたっていれば投資対象となるのでしょうか。フィッシャーは以下のような言葉を残しています。

投資の観点から言えば、どのような会社でも、少なくとも2~3年の事業活動を行い、1年間、既存の会社とはまったく違う分野で営業利益を上げた実績がないかぎり、投資すべきではないと私は考えている。

引用:フィリップ・A・フィッシャー 『株式投資で普通でない利益を得る』パンローリング

上場株式に創業間もない企業は多くありません。上場に際し一定の事業継続年数が求められるほか、審査に臨むための準備に相応の時間を要するためです。サイバーエージェントのように創業2年で上場したケースもありますが、多くは起業からある程度の期間を経た企業が株式を公開しています。

注意したいのは非上場企業への投資です。近年は株式型クラウドファンディングや専用のファンドなど、個人にも未公開株式への投資機会が提供されるようになりました。上場前に投資することで、将来その企業が株式を公開した際などに利益が期待できます。

上場していない若い企業にも魅力的な投資先はあるでしょう。しかし、やはりリスクは高いと考えられます。創業期は一般に事業の安定性に懸念があるほか、未公開株式は流動性が低く資金を回収できない可能性もあります。

株式への投資は上場企業を基本とし、もしも非上場企業に投資するならリスクには特に注意を払うようおすすめします。

文/若山卓也(わかやまFPサービス)