投資の際、助言をくれる専門家はありがたい存在です。しかし“投資の神様”ウォーレン・バフェット氏は、その役割に懐疑的なようです。

バフェット氏が専門家の話を聞かない理由

私は毎年、何百もの年次報告書を読みます。ブローカーとはまったく話をしません──彼らとは話したくないのです。人はいいアイデアを教えてくれたりしませんから(1991年春 ノートルダム大学での講演)。

引用:デイヴィット・アンドリューズ、石田文子『ウォーレン・バフェットの生声 本人自らの発言だからこそ見える真実』文響社

ブローカーは株式の売買を仲介する金融市場の専門家です。豊富な知見を持つはずですが、バフェット氏はブローカーとは話をしないと言います。理由は「人はいいアイデアを教えない」というもの。確かに、うまいもうけ話を他人に話す人は少ないかもしれません。

またバフェット氏は以下のような言葉も残しています。

今世紀中に株式から年間10%の利益を期待している人(そのうちの2%が配当から、8%が株価上昇から得られると想定している)は、暗黙のうちに2100年までにダウ平均が約2400万ドルまで上昇すると予測していることを述べておきたい。…(略)…あなたの頭を空想で満たしながら、自分のポケットを手数料で満たす口先だけのアドバイザーに注意してください。

引用:バークシャー・ハサウェイ 株主への手紙(2007年度)

「年間〇%の利益」といった予測は、将来に向かって試算すれば途方もない株価上昇を見込んでいることと同義であり、このような甘い言葉はアドバイザーが手数料稼ぎのために発していると警鐘を鳴らしています。

専門家の話は信用しすぎないようにした方がよいのかもしれません。

投資判断はシンプルな思考がコツ

専門家に頼れないなら、私たちはどのような態度で投資に臨めばよいのでしょうか。以下のような言葉が参考になるかもしれません。

質の悪い専門用語はよい思考の敵です。企業や投資専門家が「EBITDA」や「プロフォーマ」などの用語を使用するとき、彼らはひどい欠陥があるアイデアを信じ込ませようとしているのです (ゴルフでは、私のスコアはプロフォーベースで標準を下回ることがよくあります。私にはパッティングストロークを「再構築」するというしっかりした計画があるため、グリーンに到達するまでのスイングだけを数えています)。

引用:バークシャー・ハサウェイ 株主への手紙(2001年度)

※EBITDA(イービットディーエー):Earnings before Interest, Taxes, Depreciation and Amortizationの略。利払い前・税引き前・減価償却前の利益を指す。

※プロフォーマ:財務会計において、ある一定の仮説に基づいて切り出された財務情報。

投資ではさまざまな専門用語に触れる機会がありますが、バフェット氏はそれらを「敵」と切り捨てます。そしてゴルフを例に出し、シンプルに考えるよう私たちに促しています。

過度に難しく考えず、単純に判断することがうまい投資のコツなのかもしれません。

文/若山卓也(わかやまFPサービス)