「現金で持っていれば安心」時代は終わった
芳江:となると、「現金で持っていれば安心!」ってわけじゃないんですね……。
CFP:「現金が安心」という気持ちはもちろんわかるのですが、それだけに頼ってしまうと、物の値段が上がったときに目減りしてしまうリスクがあるということを、ぜひ頭に入れていただきたいのです。
光男:今まで資産について、あまり考えたことなくて。「コツコツ貯めればいいんだろう」としか思っていませんでした。
CFP:実は鴨下さまのところだけではなく、そういう方は多いんです。
今、日本の金融資産は「貯金」が5割で、しかもその6割以上は60歳以上の方の貯金額という統計があります。株式や投資信託にはわずか10%しかまわっていません。これがアメリカだと逆転していて、貯金として持っている割合は10%あるかないかなんです。もちろんそれが無条件にいいというわけではないですよ。
しかし、ただ貯金として持っているだけで、あとは年金でやっていこうという考え方は、この時代には少々危険と言わざるを得ないんですね。確かにインフレは急に2倍、3倍と進行するわけではなくて、今日100円だったものが3カ月後は110円、半年後は120円というように、少しずつ進行するものです。
「今日から急に生活できなくなる!」というわけではないけれど、ボディブローのように少しずつダメージが効いてくる……というイメージで考えていただきたいのです。
まず「資金」「資産」の違いを知っておきましょう。「資産」というのは「持っていることで、そのものの価値が上がったり、新たなお金を生み出してくれるもの」です。不動産、株式、債券などの有価証券などが「資産」です。
これに対して「資金」は元手となるお金のこと。預貯金として持っているもののことです。今はやりの暗号資産や外貨預金も資金と考えていいと思います。資金は持っていても価値はあまり変わりません。
もちろん預貯金で多少の利子が付き、外貨預金として持っていれば為替の変動で価格が変わることはあるけれど、持っているだけで価値が変わるわけではありません。1ドルは1ドルのままという具合に、基本的には価値そのものは変わらないのが資金です。
日本では多くの方が財産を「資金」としてお持ちですが、「資金」として寝かせておくのではなく「資産」に変えて持つことで資産が価値を生み出す可能性があるわけです。
●第2回(「バブルの悪夢があるので、投資は怖い」という50代におすすめの“手堅い”資産形成)では、まず設定するべき投資の出発点や、人生が豊かになる「記憶の配当」の考え方などについて解説します。
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