定年まで約10年――いよいよ“リタイア”も見えてきたけれど、この先の仕事、お金の準備は十分だろうか? そんな不安を抱える50代は少なくないようです。

話題の書籍『お金の壁の乗り越え方 50歳から人生を大逆転させる』では、そんな不安に寄り添うべく、米国公認会計士の午堂登紀雄氏が、今こそ知っておくべき“人生後半をごきげんに過ごすお金との関わり方”について分かりやすく解説しています。今回は本書第1章『人生100年時代に備えよう』、第4章『投資と上手につき合って「壁」を越える』の一部を特別に公開します。(全3回)

※本稿は、午堂登紀雄著『お金の壁の乗り越え方 50歳から人生を大逆転させる』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

年金だけでは暮らせない?

多くの人が気になる老後対策として、公的年金は必須です。金額が多い、少ないかはともかく、「何もしなくても生涯もらえるお金がある」というのは、ひとつの安心材料となるからです。

会社員は強制的に社会保険に加入となりますから、基礎年金に厚生年金が上乗せされ、それなりの年金を受け取れます。これである程度老後資金の担保になりえるでしょう。

一方、自営業者は基礎年金だけで厚生年金がありませんから、追加で付加年金 ※1や国民年金基金 ※2、確定拠出年金あるいは小規模企業共済に加入しておいたほうが安心です。

※1 付加年金とは、毎月の国民年金保険料に400円を上乗せして払い込むと、将来的に受け取れる年金額に払い込んだ月数に応じた金額が加算される年金制度のこと。
※2 自営業者のような国民年金の第1号被保険者だけが加入できる、国民年金に上乗せされる私的保険。

自営業者の中には年金をあきらめて加入していない人がいるそうですが、私は必須だと考えています。仮に月6万円しかもらえなくても、ゼロよりはマシですから。

ただし、私たちが老後を迎える数十年後、今の年金制度がそのまま継続しているとは限りません。支給開始年齢がもっとあとになり、支給額がもっと減ったりすることも考えられます。

つまり、年金だけに依存し無策で老後に突入するのはリスクがあり、別途備える必要があります。

そこでまずは年金に過度に依存するのではなく、「あればラッキー」程度に捉え、年金がなくても送れる生活基盤を構築することです。年金に依存すればするほど、いざ頼れなくなったときにどうしようもなくなりますが、年金に期待していなければ、年金はプラスのお小遣いのようなもので、ゆとりある老後を迎えることができるでしょう。

ただし、その問題解決手段が「節約貯金」というのはハイリスクです。これは自分の能力を劣化させる懸念があると私は思っています。