現役時代を老後の準備で終わらせてはいけない

ある雑誌で、ファイナンシャルプランナーが大卒の新入社員に対し、「給料の一部は老後に備えて貯蓄する習慣をつけなさい」とアドバイスする記事が掲載されていました。私はこれを読んで、前途洋々な新入社員に対し、なんとも人生のスケールが小さくなるようなアドバイスだと感じました。

新入社員ということは、おそらく23歳前後でしょう。定年退職年齢が65歳、あるいは今後70歳になっていくかもしれないとすると、これからの職業人生はあと40年以上もあるわけです。

携帯電話やインターネットが普及してから約25年、スマートフォンが出現してからまだ20年弱。私が子どもの頃、家には二槽式洗濯機、薪をくべて沸かす五右衛門風呂、カセットテープレコーダーに黒電話がありました。しかし40年後の今はもう存在しない。

パソコンやインターネットがなかった時代、オフィスで働く様子はどうだったか、携帯電話がなかった時代、外出先での待ち合わせはどうしていたか……。今の若い世代に、カセットテープや黒電話の話をしても、なんのことかわからない人も少なくないと思います。

そう考えると、40年というのは時代環境やライフスタイルが大きく変わるには十分な長さと言えます。

今の新入社員の老後なんてどうなるかわからない。時代は想像できないくらい変わり、個人の生き方も変わっていく。極端な話、新しい単位の通貨に置き換わるかもしれないし、年金もまったく違う制度になるかもしれない。

私も以前、かなり古い生命保険証券を見たことがありますが、満期返戻金が20円と書いてありました。払い戻し請求をするのも面倒に感じる金額ですが、これでも当時は、老後資金の一部になればと加入した人がいたということでしょう。

そんな環境変化の激しい時代に、40年後を見据えた貯金なんてどれほど意味があるのだろうか。40年間も老後の準備をし続けるのだろうか……。

私が考える老後対策とは、お金を貯め込むことよりも、老後でもお金を稼げる人間になることです。あるいは、老後も絶えることのない収入源を作ることです。

時代がどんなに変わろうと対処できる能力を獲得していれば、本当に老後を迎えたとき、現役時代に培った資産(人脈・経験・知識・判断力・リーダーシップ・コミュニケーション能力)がモノを言う。

そのためにも、現役時代にたくさんの経験を積み、人脈を構築し、65歳になっても雇用され続ける人材、あるいは自分の腕で稼げる人材になれるよう、その40年間を使って自らを磨き高めることが必要です。