「老後2000万円問題」やNISA制度の拡充等をきっかけに、老後資金準備への関心は国内で高まっています。しかし、まさに今はデフレからインフレへの過渡期。資金を蓄えていても、実質的に目減りしてしまう可能性もあるのです。

話題の書籍『老後が不安……。貯金と年金で大丈夫ですか?』では、現金を貯めても実質的に目減りする“インフレの怖さ”や、老後資金の不安を解消する方法について、齋藤岳志氏が会話形式で優しく解説。今回は本書の第1章「老後が心配なので、貯金をしていますがいろいろ不安です」の一部を特別に公開します。(全3回)

●第1回:「年金がある」は甘い!? ある夫婦の試算に見る「老後は意外にお金がかかる」実態

※本稿は、齋藤岳志著『老後が不安……。貯金と年金で大丈夫ですか?』(現代書林)の一部を再編集したものです。

定年後の夫婦が「収入の柱」を増やすには?

芳江:年金では足りない、貯金も目減りのリスクがあると……。私たちはどうすればいいんでしょうか。おばあさんになって路頭に迷いたくないです〜(泣)。

CFP:大丈夫です! そのために私に相談に来てくださったわけですから。まずひとつは「65歳以降も働く」ということがあります。パートなどでいいので、月3〜6万円を稼げば不足分をカバーでき、自己資金の目減りを抑えることができます。

光男:う〜〜ん、働ければ働きたいのですが、持病があって体力にあまり自信がないんですよね……。あと65歳まで働いたあとは少し休みたいというのが本音です。休んだ後で働ければいいけど、その年では仕事探しがなかなか難しいかも……。

芳江:私も働けばいいのですが、数年前に両親の介護のためにパートを辞めてしまって、先の見通しが立たない状態です。

CFP:健康あっての第二の人生ですから、無理をするのはよくないと思います。もうひとつの方法は、手持ちのお金を増やす資産運用、つまり投資です。せっかく3000万円もの資金があるのですから、お金に働いてもらうという考えです。

芳江:「お金に働いてもらう」って言葉、ものすごく魅力的ですね!

CFP:ちょっと辛口になってしまうかもしれませんが、これからの時代、年金収入は「収入の柱のひとつ」として考える必要があると私は思っています。年金だけで老後資金をすべてまかなうという姿勢では難しいのです。

もちろん年金だけで大丈夫な人もいるし、自己資金が十分あって「どれだけ長生きしても大丈夫!」という方もいらっしゃると思います。しかしそうでない方も多いのが現状です。

老後資金を試算してみて、たとえば「80歳で資金が枯渇しそう」「90歳まで持たない」ということなら、定期的に収入が入ってくる仕組みを資産運用によって作る必要があると思います。