経費率が開示されたら、その数値にどう向き合えばいいか

投資信託協会は、2024年4月21日を実施日として、「交付目論見書の作成に関する規則に関する細則」の一部改正を行っている。運用会社によっては既に運用報告書に経費率を記載しているが、原則として来年4月以降は、目論見書にも円グラフの形式で記載されることになる。

今回の措置により、投資家は自身が実際に負担するコストの総額を把握しやすくなる。同じカテゴリーのファンドで総コストを比較することが容易になるという点は歓迎したいが、経費率が開示されても、その値が妥当な水準かどうかの判断はやはり難しい。コストの差が必ずしも運用成績と比例しないアクティブ型の場合は特にそうだ。

前回も触れた通り、重要なのはあくまでもコスト控除後のリターンである。

ファンドを選ぶ際、どうしてもコストの絶対値が気になってしまうという人はまず、経費率とリターンをセットで確認する癖をつけると良いだろう。同じカテゴリーの中で、トータルリターンは最も高いが、経費率も相対的に高いというケースはよくある。

次に、経費率を押し上げている要因がどこにあるのか確認してほしい。先の計算式の分子、つまり、信託報酬やその他経費に要因があるのか、または、分母=残高が小さいことが要因なのか、という点である。後者の残高が小さいケースは、トータルリターンが高くても少し注意した方が良い。コスト効率が悪いだけでなく、残高の水準によっては繰上償還のリスクを抱えているためだ。新NISAで長期資産形成を検討するなら、この点は極めて重要である。

以上、本稿で見てきた通り、投資信託のコスト分析は、値の高低だけでファンドの良しあしを判断できるほど単純なものではない。本連載では、新NISAの開始に向け、今後も投資信託の選び方をさまざまな角度から取り上げていく。