前回(信託報酬の基準は投信ごとに違っていた!? 新たな統一基準「総経費率」とは)に続き、今回も投資信託のコストについて掘り下げていく。

2024年4月から総経費率の目論見書記載が実質的に義務化されることを受け、運用会社各社は対応を進めている。

投資信託の経費率とは、目論見書に掲載されている信託報酬と、「その他費用」の合計を、期末時点の純資産残高で除した値を指す。実は、信託報酬に何を含めるかという基準は運用会社各社で解釈が異なっていた。具体的には、株価指数の使用料や法定書面の作成費用を信託報酬に含める会社と、「その他費用」として別計上する会社があり、後者に対しては“見掛け上”のコストを意図的に抑えているのではないかという批判がネット上で一部巻き起こるなどしていた。

●総経費率の算出方法(前回から再掲)

確かに、投資家の視点に立つと、購入時に開示される信託報酬だけで、ファンドに関わるコストを賄えていないというのはどこか納得がいかないかもしれない。しかし、ここで少し冷静に考えてほしいのは、「信託報酬」はあくまでも、運用会社や販売会社に対する「報酬」という点である。

先述した指数使用料や法定書面の作成費用は、残高の増減に関係なく発生する固定費であって、投信運用の対価として支払われるものではない。このように考えると、信託報酬と固定費用を分けて計上するという運用会社の選択に何ら違和感はない。

ちなみに、ETF(上場投資信託)は、指数使用料や上場費用などが原則「その他費用」として別計上されている。経費率の考え方は元々ETFの世界でよく使われてきたが、その背景には、「その他費用」が確実に存在し、かつ、総コストに占める割合が相対的に大きいというETFならではの事情が関係している。なお、投資信託もETFも、ファンドの純資産残高が大きいほど(先の計算式の分母の値が大きいほど)経費率の値が小さくなるということに変わりはない。言い換えると、残高が小さいファンドほど、信託報酬と経費率の乖離幅は大きくなる。その他、保管費用が高くなりやすい新興国資産に投資するタイプや、デリバティブを活用したタイプも、「その他費用」の割合が大きく、経費率が高くなる傾向にある。