混迷期の日本を生き抜くために行動する必要性

一般的に日本人は「正常性バイアス」が強いといわれます。正常性バイアスとは、自分に都合の悪い情報を無視したり過小評価したりして、不安や心配を減らす心のメカニズムのことを言います。

迷ったら動かない、何もしなくても大丈夫だ、下手に動くと危ない――そういう性質が日本人のDNAに強く刻みつけられているのかもしれません。しかし、緊急時にあえて動かないということは、その場所に居続けるということを積極的に選択しているにほかなりません。隣家で火事が起きているのに、「そのうち消えるだろう」と避難しないのは危険であるばかりか、愚かとさえいえるでしょう。今の日本には、まさにそれに近い状況も散見されます。

「国と地方の公的債務(借金)が1200兆円を超えた」、「年金受給開始が70歳以上になるかもしれない」といわれているのに、まだ多くの人が「何とかなるだろう」と考え、行動を変えようとしていません。筆者は、今「何もしない」という選択は、積極的な不作為への強い拘りであり、これはあり得ないと考えています。

「人生100年時代」と言われる昨今、少しでもゆとりある生活を送りたいなら、資産の多寡にかかわらず、「今」この瞬間から考え方を変え、そして実際に行動する必要があります。

以上から、筆者は「あえて行動しないで、成り行きに任せる」考えには否定的であり、「あえて行動し、成功・失敗の両面を経験しながらも教訓を得つつ前に進んでいく」ことを強く推奨します。

例えば、現時点である程度の余裕資金を持っているとして、それを利息がほとんど付かない普通預金に放置しているというのであれば、それを積極的に選択していないにせよ、まさに悪手と言わざるを得ないと思っています。

日本銀行は破綻するのかしないのか、ドル/円は高くなるのか安くなるのか、株価は上がるのか下がるのか、台湾有事は起こるのか――「専門家」といわれる人の意見もまちまちです。

ぜひ自分で考え行動する力を身につけて、勇気を持って混迷の時代に立ち向かいましょう。

●第3回(タンス預金は非常識に…デフレ→インフレの転換が資産運用にもたらす“大きすぎる影響”)では、バブル崩壊から30年つづいたデフレの終焉によって、どのように“かつての常識”が通用しなくなっているのかを解説します。

『「新しい資本主義」の教科書』

池田健三郎 著
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