「専門家」の声に惑わされすぎない
現在、世の中には、「日本は財政破綻状態となり日本円は紙くずになる」という悲観的なものから、「まったく心配ない。金融緩和と財政出動の継続で日経平均が4万円程度まで上がるだろう」といった楽観的なものまで、実にさまざまな意見で溢れています。
率直に言って、誰も将来を正確に予測することなどできません。しかし、どのようなことが起きようと、自分の生活や資産を守り、できれば幾分増やす。そのためにどのような方法があるのかをオーソドックスな理論で考えてみました。
この「オーソドックス」というのが極めて重要で、世の中の「専門家」と称する人たちの中には、説得力に欠ける根拠をもとに極論を振りかざして自陣を固める方や、難しい専門用語を多用して煙に巻いてしまう方も少なくないのです。
彼らは皆、自己の利益のために戦略的に行動しているので、その動機自体は否定いたしませんが、筆者は、極端な主張をして話題作りするつもりはありません。さらに、特定の政治勢力の思想に紐(ひも)づいた主張もいたしません(ただし、私は「小さな政府」の下での自由経済と市場機能の維持・強化と、そのための必要最小限の公的部門の介入を重視しており、「大きな政府」による統制強化や生産手段の共有化という立場はとりません)。まして特定の金融商品を売ろうという意図もまったくありません。
ですから、何者からの影響や圧力も受けず、自身の中央銀行や民間シンクタンクでの経験をもとに、金融や公共政策の学会等で幅広く共有されている知見に加え、金融関連の実務家ならば当然そう考え行動するであろうという「常識的なスタンス」に立脚して、私見を率直かつ具体的に述べます。