売上高3兆円へ 引き継いだ電池事業で目指す高成長

三洋電機の買収で電池事業を強化したパナソニックは、業界トップクラスのメーカーへと成長しています。SNEリサーチによると、2022年は車載電池で世界4位のシェアを獲得しました。中国勢と韓国勢が大部分を握るなか、日本勢では唯一上位に食い込んでいます。

【車載電池の世界シェア上位5社(2022年)】
・CATL(中国):37.0%
・LGエナジーソリューション(韓国):13.6%
・BYD(中国):13.6%
・パナソニック:7.3%
・SKオン(韓国):5.4%

出所:SNEリサーチ プレスリリース

パナソニックの電池事業を担うパナソニックエナジーは2023年6月、前年に発表した中長期経営計画を更新し、2030年度までに全体で売上高3兆円を目指す目標を明かしました。主に車載向け電池が成長をけん引する内容で、8年間で3倍超、毎年15%以上成長する計算です。

【中長期経営計画の財務目標(パナソニックエナジー)】

   2023年3月期   2031年3月期 
(目標値)
  増加率   増加率
 (年率) 
 全体 0.97兆円 3兆円超 3.1倍 15.2%
 内、車載 0.65兆円 2.5兆円 3.8倍 18.2%
 内、産業・民生  0.31兆円 0.6兆円 1.9倍 8.4%


出所:パナソニックエナジー 中長期戦略の進捗(しんちょく)

3兆円の売上高は業界2位のLGエナジーソリューション(2022年:約2.7兆円)を上回る水準で、パナソニックグループの中核事業である家電(くらし事業)に匹敵します。

【パナソニックHDのセグメント業績(2023年3月期)】

  売上高 営業利益
 くらし事業 3兆4833億円   1031億円
 オートモーティブ  1兆2975億円 162億円
 コネクト 1兆1257億円 209億円
 インダストリー 1兆1499億円 668億円
 エナジー 9718億円 332億円
 その他   1兆1994億円 377億円


出所:パナソニックホールディングス 決算短信

目標到達に向け電池の高容量化と生産能力の増強に取り組むとしていますが、顧客の開拓も重要でしょう。パナソニックは米EVメーカー大手のテスラへの依存が指摘されており、野心的な計画の達成には新しい供給先の獲得が欠かせません。

もっとも、新規顧客の獲得は順調なようです。2022年12月にEVメーカーの米ルーシッド社にリチウムイオン電池の供給契約を締結したほか、2023年4月にはゼロ・エミッション(※)トラックなどを開発するノルウェーのヘキサゴンプルス社に車載電池を供給する契約を結びました。同年6月にはマツダと将来の車載電池供給に向け協議を開始しています。

※ゼロ・エミッション:廃棄物を排出しないこと。エミッションは「排出」の意。

車載向け電池は海外勢がシェアの大半を握っています。パナソニックの電池事業は計画通り成長できるのでしょうか。注目が集まります。

文/若山卓也(わかやまFPサービス)