赤字領域「ヘルスサイエンス」は黒字化するか
ミャンマーは苦い結果となったものの、撤退は完了しています。目下の課題は、苦戦するヘルスサイエンスの黒字化でしょう。
キリンは2019年にライフサイエンス領域を立ち上げ、孫会社だった協和発酵バイオを子会社化しました。健康に関する分野は国内外で市場拡大が続いており、これに参入することで収益の多角化を目指したものとみられます。
しかしヘルスサイエンス領域は投資先行が続いており、うまく利益を稼ぐことができていません。2021年度にはわずかに黒字化したものの、2022年には71億円の事業損失が生じました。
さらに昨今のインフレなどからコスト増に伴う収益性の悪化から、期待する収益を得られないと判断し、約430億円の減損を計上しています。2023年12月期も約48億円の事業損失を予想しており、しばらく出血は続きそうです。
当面は収益性の悪いアミノ酸事業を縮小し、シチコリンといったスペシャリティ素材に特化して業績の改善を目指すとしています。目論見通りヘルスサイエンス領域が黒字化すれば、停滞するキリン株式も上昇に転じるかもしれません。
文/若山卓也(わかやまFPサービス)