ミャンマー撤退で損失190億円 事業増益は確保

キリンの海外事業は主にオーストラリアが支えています。1998年にオーストラリアのビール大手ライオンネイサンに資本参加し、2009年に完全子会社化しました。オーストラリア事業はおおむね好調で、業績全体の1割ほどを担っています。

しかしミャンマーへの進出は失敗でした。2011年に軍政から民政へ移行したことを受け、キリンは2015年に現地首位のビール会社だったミャンマー・ブルワリーの株式を約700億円で取得します。ミャンマー事業は順調に成長し、2020年12月期には事業利益の8.5%を占めるほどになっていました。

【ミャンマー・ブルワリーの業績(2020年12月期)】
・売上高:318億円
・事業利益:138億円
・(参考)キリンHDの連結事業利益:1621億円

出所:キリンホールディングス 有価証券報告書

ところが2021年、ミャンマー軍は突如としてクーデターを起こし、再び軍事政権に復帰します。キリンはただちにミャンマー事業の終了を決め、2023年1月に株式譲渡で撤退します。この処理で約190億円の損失が発生し、2023年12月期第1四半期は前年同期比で約68%の大幅な最終減益となってしまいました。キリンにとっては思わぬ打撃を被った格好です。

なお、事業利益ベースでは増益を達成しています。価格改定やコスト削減の効果が出たほか、好調なキリンビールや北米飲料事業のコーク・ノースイーストが利益を押し上げ、3割以上の事業増益を果たしました。