「三位一体改革」を推進させたい総務省との綱引き
こうした検討事項に加えて、NHKはかねてから総務省から要請されてきた「三位一体改革」も推進していかなければならない。
三位一体改革とは以下に示すとおり、受信料・業務・ガバナンス(企業統治)を対象とした取り組み。NHKは関連するさまざまな施策を進めてきたが、各種報道メディアからは「道半ば」と指摘されるなど、いまだ途上といえる。さらなる改革を断行せずしてインターネット活用事業を肥大化させていけば、総務省などから「ほかにやることがあるのでは」とのそしりを免れない。
①受信料
2000年代ごろから受信料の公平負担に関する検討がたびたび行われ、支払率向上などを図るための受信料値下げの議論が本格化してきた。近年では組織内のコスト削減に努め、その利益を国民に還元することが受信料引き下げの主な目的となっている。
国民・視聴者にとって納得感のある料金としていくべく、NHKは2022年10月から、地上波放送のみ視聴できる「地上契約」、ならびに地上波とBS放送を視聴可能な衛生契約をそれぞれ1割程度値下げする予定としている。
②業務
受信料に関連して、値下げの原資確保に向けたコスト削減が重要な課題だ。番組制作費や設備の維持・補修費はもちろんのこと、人件費削減を目的とした業務委託や人事・組織制度の見直しなど「経営のスリム化」が急務となっている。
これについてもNHKは取り組みを加速させており、例えば番組制作費については2023年12月にBS(衛星)放送のチャンネル数削減を予定している。人件費に関しては、戸別訪問をして受信料の契約をする外部スタッフを大幅削減。2023年9月には全廃する方針だ。
さらに2022年、子会社5社を束ねる中間持ち株会社「NHKメディアホールディングス」を設立。実質1社として運営できる体制を整え、これまで重複してきた業務や人員の集約化に着手した。また「NHK交響楽団」など財団法人5団体を統合するなどの施策も推進している。
③ガバナンス
NHKが提供する「公共放送」の位置づけを確認しつつ、それにふさわしい運営がなされるよう、経営体制を構築していくよう求められてもいる。上述した関連団体の事業統合・再編による効率的なグループ体制構築もその一環だ。
そのほか、コンプライアンスの徹底や不祥事を未然に防ぐための組織風土づくり、個人情報保護はもちろんのこと、意思決定の透明性を図るための情報公開の推進や、第三者によるチェック体制の充実なども議論の俎上(そじょう)にあがっている。