「売りオペ」と「買いオペ」の絶妙なバランス

太郎:さっき、日銀は銀行等から国債を買って日銀当座預金の量を増やすって言ってたよね。逆に言えば、日銀が国債を売れば日銀当座預金の量は減るってことね。そうやって日銀当座預金の量が増減すれば、それに合わせて民間の金利も上下するってこと?

――そう。日銀が国債を買って銀行等の日銀当座預金の残高を増やすことを「買いオペ」、逆に国債を売って日銀当座預金の残高を減らすことを「売りオペ」と言う。

日銀は買いオペと売りオペをうまく使い分けることで、金利を操作している。なお、バブルの話(第2回)で触れたように、昔は日銀が民間銀行にお金を貸し出す際の金利(公定歩合)を上下させて民間の貸出金利を操作していた。

太郎、金利が 10%のときと、1%のときだったら、どっちのときにお金を借りたいかな。

太郎:そりゃあ1%のときだね。返すときの負担が軽いから。

――そうだね。そのように、金利が低くなれば、普通は借りたい人が増えるから、貸し出しが増える。

太郎:貸し出しが増えれば、預金通貨が増えるんだよね。

――つまり、金利が下がると預金通貨の増加ペースが速くなる。逆に、金利を上げれば、預金通貨の増加ペースは落ちる。

個人や会社が持っている現金・預金をすべて合わせたものを、マネーストックと言う。これはつまり現実に世の中に出回っているお金で、物価にも影響を及ぼす。金利を下げるとマネーストックの増加ペースは上がる。

すなわちお金の価値は下がるので、物価は上がるというわけなんだ。

『データで見る日本経済の現在地 働くときに知っておきたい「自分ごと」のお金の話』

明石順平 著
発行所 大和書房
定価 1,760円(税込)