「勝ち組」の先輩に誘われて意気揚々と物件オーナーに

Aさんがワンルームマンション投資を始めたきっかけは、会社の先輩であるBさんに声をかけられたことでした。Bさんは副業としてワンルームマンション投資を始め、その時点でかなりの利益を得ていました。「この価格で買って、ここまで値上がりしたぞ」「お前もやってみないか?」と誘いを受け、Aさんもすっかりその気になりました。

大企業に勤めているといっても、いつ何があるかわからない時代です。将来のために、今から手を打っておきたいと常々考えていたAさん。AさんはBさんがワンルームマンションを買った不動産業者を直接紹介してもらい、早速手ごろな物件を見つけてローンを組み、物件購入に踏み切りました。

“紹介”の威力は大きく、実際に「友人から誘われて」「上司に声をかけられて」不動産投資をする方は、かなり多いです。中には1つの不動産会社が、役員クラス以下社歴の短い若手までを対象に会社の隅々に入り込んで紹介セールスを展開し、紹介料の授受が行われているケースもあります。

こうして、晴れて物件オーナーとなったAさん。老後の安心ができたと、ほっとしました。しばらくして同じ業者から誘いを受け、所有物件と同フロアのワンルームマンションをもう1部屋買い足しました。

こんなはずじゃなかった!  ガックリと肩を落とし…

しかし、1年、2年経つうちに、Aさんは思ったよりこの投資がもうかっていないことに気づきます。それどころか、家賃が入って来ても、ローンや経費を支払うと毎月マイナスが出ており、入居者が入れ替わるタイミングでは、原状回復費やら入居者募集費やら思いもよらなかった高額出費が発生し、不安になったAさんは、私たちのところに相談に来ました。

「なぜ先輩は上手くいっているのに、自分はもうからないのか!?」。Aさんは納得がいかなかったと思います。もちろん、Bさんが故意にAさんをだましたわけではありません。前回ご説明した通り(不動産鑑定士が警告する「やってはいけない」マンション投資とは?)、ワンルームマンション投資で成功するには、まずは「安い時に買う」ことが大事です。

先に投資で成功していたBさんは、おそらく都内の不動産が値上がりしてピークを迎える前にワンルームマンションを買い、家賃収入をある程度得た上でいい形で売却できていたのでしょう。「もうかっている人も確実にいる」のです。

しかし、Aさんの購入物件は高値づかみとなっており、ローンや経費と相殺すると利益が出ない構造で、持ち続けてもキャッシュフローが改善されそうにありませんでした。まだまだ若いAさん、早めに手を打てば資産形成のやり直しが十分に可能です。そこで、私共はAさんと何度もご面談を重ね、ご売却の結論に至りました。

ところが、いざ売却を進めようとしたところ、これが簡単ではありませんでした。なぜなら、Aさんの購入した物件にはサブリース契約がついており、このサブリース業者が強烈だったからです。