物件ごとに大きな個体差
ここで一つ気をつけたいのが、同じセクターの中でも物件ごとの個体差が大きい点です。
絶好調といっていい物流施設ですが、内実は二極分化しています。Eコマースの追い風を享受できているのは、DX(デジタル・トランスフォーメーション)に対応できて、スピーディーな荷物の仕分けや配送を省人化しつつ実現している施設です。
実は私自身、コロナ下の2020年に、物流施設だけに特化したファンドに新規投資した経験があります。投資を決断する前には、そのファンドに組み入れられた最新の物流施設を千葉県流山市と埼玉県三郷市の2カ所で見学しました。
特に流山の施設は、オープン間もない最新鋭のスペックでした。ここでは、トラックの運転手はスマホで荷受け・荷渡しなどの情報を入力。トラックに荷物が積載するまでの待ち時間に、施設内のシャワールームを使ったり、コンビニエンスストアや食堂を利用したりできるようになっていました。DX対応はもちろんのこと、人手不足のトラックドライバーたちに「選ばれる施設かどうか」が決定的に重要と、このファンドの担当者が説明してくれました。
実物資産ゆえの「現場百回」が重要
私は企業年金基金に勤務する前、同じ新聞社の不動産子会社で主にオフィスビルの開発や運営に携わりました。その際、同業他社のビルを多数見学し、複数の不動産仲介会社へのヒアリングを重ねました。そうすると、同じエリアで似たようなスペックのAというビルとBというビルがあり、Aは常に満室状態なのに、Bは空きフロアが1年以上埋まらない、といったケースをしばしば目にしました。価格設定、携帯電話がかかりやすいかどうか、入居している飲食店の質、オーナーのテナント対応の良し悪し……原因はさまざまですが、外観だけでは分からない「それなりの理由」があるのです。
実物不動産にしても、REITなどにしても、投資対象となっている物件を可能な限り調査する。現物を見ることができるなら、それに越したことはありません。企業年金基金時代に知り合ったベテランの常務理事は、保有するファンドの運用報告を聞くだけでなく、ファンドに組み入れられた物件の視察を定期的に行っていました。そうすることで、運用報告書の数字だけでは分からない今後の見通しを肌で感じることができる。そう話していました。
「現場百回」
事件捜査も資産運用も基本は一緒なのかもしれません。