買いたくても買えない不動産の優良ファンド
私募REITには国内だけでなく海外のファンドもあります。私が運用を担当していた新聞社の企業年金基金でも、国内ファンドに加えて欧州数カ国のオフィスビル、商業施設、ホテルに分散投資するファンドや、米国やアジアを含めた数十の不動産ファンドをパッケージにしたファンド・オブ・ファンズ(FOF)に投資していました。
国内のファンドは、いずれも大手の不動産デベロッパーの子会社が運営しているもので、極めて安定した収益を享受できていました。追加投資も何回か行いました。投資の募集は物件が増えるか、投資家の解約で「窓」が開いたときに限られていました。また募集は既存の投資家優先で、新規に投資するのは当時から困難でした。
この1年ほど、日本と米欧の金利差拡大で為替ヘッジコストが増大したことから、為替リスクがない国内の不動産ファンドの人気が一層高まりました。現在では、大手デベロッパー系などの優良ファンドは買いたくても買えない状態のようです。不動産投資に詳しいアナリストの1人は「日本の不動産は別次元」と話していました。
Eコマースの恩恵で物流施設が好調
ひとくちに不動産と言っても、内容は多様です。代表的な分類では
オフィス/商業施設/物流施設/ホテル/住宅/その他
といったところでしょう。以前はセクター間の収益性の違いなどはそれほど注目されていませんでしたが、コロナ禍で一変しました。容易に想像がつくと思いますが、一番大きな打撃を受けたのがホテル。旅行需要の激減の影響です。商業施設はスーパーなど日常使いのお店はそれほどでもありませんでしたが、大型のショッピングモールは大きく落ち込みました。テレワークの浸透でオフィスも相当厳しくなりました。
その一方で堅調だったのが物流施設と住宅。中でも物流施設(要するに倉庫です)は、AmazonなどのEコマースの爆発的な普及に対応するために、需要が大きく拡大して収益が大きく伸びました。住宅も、家にいる時間が長くなったことなどもあって、安定した成長を見せています。