日本では、これから定年を迎える女性が増えると予想されています。

こうした女性たちが“明るい定年後”を迎えるには――? 長寿化とライフスタイルの多様化が加速する日本において、今後、ますます重要度が増すであろうこの問いにさまざまなデータとともにヒントを送るのが、話題の書籍『女性と定年』です。

今回は特別に、同書の第1章『これから増える定年女性』、第2章『女性の定年とお金』の一部を公開します(全3回)。

●第1回:おひとりさま女性は年金だけで“ゆとりある老後”は困難!? 準備すべき貯蓄額は…

※本稿は『女性と定年』(小島明子著・金融財政事情研究会)の一部を再編集したものです。

定年女性が求める事務職は幻の職種、公的機関で幅広く職探しを

定年まで働き続けた女性の中には、働くことが好きで定年後も仕事を続けたい方や、社会と関わっていたいから仕事を続けたい方も少なくないでしょう。男性も同様ですが、定年後の再就職先を見付けるのは、簡単なことではありません。

定年後の再就職先が見付からない場合、多くの人が活用するのが公的機関となります。現在、ハローワークのシニアコーナーで求人が多いのは、警備、マンションの管理人、ビル清掃、学校の用務員などです。中小企業の事務職の採用ニーズ自体は少なく、倍率は高くなっています。実際、事務職にこだわり100社応募する人や、逆に、1つの事務職の求人に100人近くが応募するケースもあると聞いたことがあります。女性が希望する職種は、「一般事務・サポート」が多いのですが、どうしても職を得ることが必要な場合、希望していた事務職での就職が決まらなければ、職種転換の道も考えなければなりません。

公的機関の就職支援講習では、求人が多い業界(介護、マンション管理人、警備員、ビル清掃、調理等)の業界団体と連携して再就職支援を行っているところもあります。最近では、社会へ貢献しながら報酬を得たいという理由から、介護関連のコースを受講するケースも増えていると耳にします。介護業界は人手不足であり、即戦力としての活躍が求められます。施設介護の場合は、施設で働く方々との人間関係にも気を使いますが、在宅介護の場合は、担当のお客さまのところに訪問して介護を行うことが中心となるため、ご家族や要介護者と良好な人間関係を築けると、在宅介護の仕事のほうが合っているといって、高齢になっても働き続ける人もいます。定年前の女性でも、どのような講習があるかということを定年前から調べておいて損はないでしょう。

また、職業を検索するための公的サービスとしては、ハローワークインターネットサービスが挙げられます。再就職活動をきっかけに、職業情報を調べることで、今まで知らなかった職業を知り、関心を持てれば、自分の可能性を広げるきっかけにもなります。定年後のキャリアを考えたタイミングで、キャリアカウンセリングの活用をするのも一案です。定年後に焦って往訪するのではなく、どのような仕事やサービスがあるのか、早いうちに調べてみてはいかがでしょうか。

公的機関以外にも民間の人材派遣会社の活用をすることも可能です。特に、大企業出身者のなかには、定年まで同じ会社で働き続け、定年後の再就職活動が初めてのキャリアチェンジとなる人は少なくありません。高い専門性がなければ、再就職活動が難しいと考える人もおられるかもしれませんが、誰しも長年働き続けていれば、スキルや経験があり、ポータブルスキル※1をもっています。定年を機に、自分のポータブルスキルを活かすことによって、募集している職種や今までに所属していた業界にとどまらずチャレンジすることもできると考えます。

※1 厚生労働省「ミドル層のキャリアチェンジにおける支援技法」

厚生労働省編職業分類によれば、職業の数は約1万7000種類に上るといわれています。仮に60歳を区切りとしても、20年で80歳、その後の20年で100歳です。健康な体と柔軟性さえあれば、様々な仕事にチャレンジすることができるのではないかと感じます。