日本では、これから定年を迎える女性が増えると予想されています。

こうした女性たちが“明るい定年後”を迎えるには――? 長寿化とライフスタイルの多様化が加速する日本において、今後、ますます重要度が増すであろうこの問いにさまざまなデータとともにヒントを送るのが、話題の書籍『女性と定年』です。

今回は特別に、同書の第1章『これから増える定年女性』、第2章『女性の定年とお金』の一部を公開します(全3回)。

※本稿は『女性と定年』(小島明子著・金融財政事情研究会)の一部を再編集したものです。

管理職経験者の定年女性も増える

皆さんは、定年について考えたことはありますか。定年を目標に働いてきたわけではなく、目の前の仕事を一生懸命やってきたら、今に至っているという女性は多いのではないでしょうか。正社員として、定年まで働き続けてきた女性が少ない中、定年を迎えた後、あるいは迎える前にどのようにキャリアをシフトいく方法があるのか、ロールモデルのケースも少なくイメージが湧きづらいのが現状です。

今までも定年まで勤め上げる女性は、決していなかったわけではありません。しかし、今後は徐々にではありますが、年を追うごとにその数が増えていき、中でも、管理職を経験した定年女性が増えることが予想されます。

1986年には、男女雇用機会均等法(雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律)が施行され、女性も総合職として採用されるようになりました。長時間労働が前提となる世代、男女雇用機会均等法施行後に入社した多くの女性たちにとって、仕事と家庭の両立は容易なことではありませんでした。しかし、長時間労働に耐えながら、仕事と子育てを両立しながら働き続け、あるいは、結婚や出産という機会を選択せずに仕事を優先し、勤め先で女性として初めて管理職や役員として登用された人が多い世代でもあります。今、多くの若い女性たちにとって働きやすい環境になっているのも、男女雇用機会均等法世代の女性たちが頑張って道をつくってきたことが大きかったのではないかと思います。そして、ちょうど、彼女たちにも定年の年齢が近付いてきています。

2012年頃を境に、政府が女性活躍を大きく掲げたタイミングで、多くの企業が、女性の管理職への登用や、仕事と家庭の両立支援制度の整備を始めるようになりました。現在、勤めている若い世代が結婚や出産のタイミングで、「仕事か家庭か」を選択することは少なくなったと感じます。女性の就業者数は年々増え、管理職としても登用される女性が増えてきています。特に、女性の係長級の比率は約2割を超え、若い女性の役職者への登用が徐々に進んでいるのです。将来、管理職経験者をはじめ、定年まで働く女性たちが非常に増えることはデータをみても想像ができます。

●図表1 女性の就業者数の変化

出所:内閣府「男女共同参画白書 令和4 年版」をもとに日本総合研究所作成

●図表2 女性の役職者比率の変化

出所:内閣府「男女共同参画白書 令和4 年版」をもとに日本総合研究所作成