経済的不安とどう向き合うか
別の角度から、さらにこの問題を見ていきましょう。「高齢者」と呼ばれる年代になると、ひとり暮らしだろうと家族がいようと、経済的な不安がつきまといます。
それに輪をかけているのが数年前からテレビや週刊誌などで見かけることがやたらに多くなった「下流老人」や「老後破産」といった言葉です。こうした言葉がシニアの不安感を必要以上に煽っているように思えてなりません。
シニアが不安を募らせすぎると、「もうダメだ」と悲観して、うつになる心配があります。
老人性うつは増加の一途をたどっています。その伸び率が「下流老人」「老後破産」という言葉で拍車をかけてしまう可能性が高くなると考えられます。
しかし、こうした言葉から生まれる「悲観」は、単なる思い込みであることが珍しくありません。リタイア当初に考えた10年、20年先のことが実際に起こるかどうかなんて誰にもわからないのですから。
ところが「悲観」にとらわれがちな人は、「貯蓄は300万円しかないし、年金も年に100万円あるかないか。これでは暮らしていけない……」などと考えてしまいます。このような悲観的な考え方が高齢者のうつを誘発するのです。
では、どうすれば老人性うつにならずにすごせるのでしょうか。
あれこれ将来を考えすぎないことです。
とくにシニアの仲間入りをしたばかりの人は頑張りすぎるきらいがあります。「考えすぎない」くらいでちょうどいいと思うのです。
未来は誰にもわかりません。自分が何歳まで生きられるかもわかりません。「神のみぞ知る」の世界なのです。
厚生労働省によると、年金だけで生活している高齢者は2019年調査では約半数(48.4%)いましたが、2022年9月の公表された「2021年 国民生活基礎調査の概況」では24.9%と半減しています。
しかし、この数字は「年金だけで食べていける人が減った」というよりも、「年金をもらいながら仕事をしている人が増えている」結果と考えられます。その根拠となるのが、政府が推奨している、定年延長などで70歳までの就業確保です。
そうでなくても、以前よりは再就職先は見つかりやすくなっているでしょう。賃金は現役時代より大幅に減るでしょうが、それでも年金だけではないのです。
ポジティブな考え方が身につけば、老人性うつとは無縁になります。そして、より楽しく平穏なひとり老後をすごせるようになるでしょう。
●第2回(親戚で揉めまくる事態にも…“子どものため”に残したお金が引き起こす悲劇とは)では、自身でお金を使うことを控え、多くの遺産を残す問題点について解説します。
『老いも孤独もなんのその「ひとり老後」の知恵袋』
保坂隆 著
発行所 明日香出版社
定価 1,485円(税込)