資産形成をする大半の人の目的は、「老後」の生活のためでしょう。ただ、そうして迎えた“老後”において、心晴れやかに過ごせない人も少なくないと精神科医の保坂隆氏は指摘します。また、現在配偶者やパートナーがいる人も、独居老人――つまり「おひとりさま」になる可能性があることを念頭に置いておくべき、とも。
話題の書籍『老いも孤独もなんのその「ひとり老後」の知恵袋』では、孤独や寂しさとは縁遠い豊かな「ひとり老後」を過ごすための準備について、保坂氏がやさしくアドバイスを送ります。今回は本書冒頭の『はじめに』と第3章『今あるお金とうまくつきあっていく』の一部を特別に公開します。(全3回)
※本稿は、保坂隆著『老いも孤独もなんのその「ひとり老後」の知恵袋』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。
実は老後のシングルライフには夢があふれている
独居老人、つまりひとり暮らしの高齢者が増えています。
内閣府の「令和4年版高齢社会白書」によると、1980年には男性約19万人、女性約69万人だった65歳以上のひとり暮らしは、2020年には男性約230万人、女性約440万人にまで増加しています。
この数字はさらに大きくなり、2040年には男性約360万人、女性約540万人になると予測されています。約20年後には65歳以上の高齢者の4~5人に1人がひとり暮らしになるのです。
人生百年時代を迎え、「シニアといわれるようになってからをどう生きるか」が大きなテーマになりつつあります。さらに言えば、「ひとり暮らしになってからどう生きるか」は、ますますクローズアップされてくるでしょう。
妻または夫との死別、熟年離婚、子供たちの独立などなど、ひとりになる理由はさまざまでしょうが、備えあれば憂いなし、“その日”に備えて心の準備をしておく必要があります。
実際、ご主人に先立たれ、心にポッカリと空いた穴を埋められずに、うつ状態になってしまった方もいます。奥さんや子供に出て行かれ、孤独感にさいなまれ、すべてのやる気を失ってしまった方もいます。
そうならないためには一に準備、二に準備です。
この記事は、すでにひとり暮らしを始めている方、これからひとり暮らしになる予定の方、あわよくばひとり暮らしをしてみたいと目論む方が主な対象です。心の準備のしかた、近隣の人たちとのコミュニケーションの取り方、毎日の生活の心得、衰えゆく脳をどう活性化させるか、といったことを精神科医の立場から書かせてもらいました。
これまでの人生では、自分の意のままにならないこともあったかもしれません。こうすればよかったという後悔もあるかもしれません。そうした思いは、これからの人生ですべて払拭できるのです。
まさにゼロからのスタート。それがひとり老後です。これからは何から何まで、すべてを自分で決めることができます。若い頃、夢見ていたことにチャレンジするのもいいでしょう。かつて挫折したことに再挑戦することもできるのです。
「ひとり老後」というと、誰とも関わりを持たない、寂しいイメージを抱いていませんか。しかし、断言しておきますが、そのイメージは間違っています。
考えてみてください。これからは現役時代の責任と束縛から解放され、限りない自由が楽しめるのです。医療の発達で寿命も伸びました。高齢者と呼ばれる人でも、昔と比べるとはるかに健康で若いのです。
しかも、ひとり暮らしでは、残されたたっぷりの時間を誰に遠慮することなく、自分のためだけに使えるのです。こんな幸せなことはないでしょう。明日からのことを思い浮かべるだけでワクワクしてきませんか。
どうぞ、生き生きとしたシングルライフを手に入れてください。