「老後は年金でミニマムな生活をすればいい」で満足ですか?
「老後は地方に移住して、年金で細々と暮らしたい」と考える人は、昔もいまも一定数いるようです。昨今は「もたない暮らし」「ミニマムな暮らし」など、おしゃれに小さく暮らすことがトレンドになったり、「山奥ニート」も話題になったりしました。
年齢とともに、持っている物をコンパクトにしていくのは大賛成。モノの管理や、片付け、探し物をする時間と労力が省けて、心も軽くなるものです。
ただ、暮らしを小さくしたからといって、考え方や生き方まで小さくまとまらなくてもいいのではないでしょうか。支出を抑えて、できるだけお金を使わないようにしようとすると、考え方も小さくなりがちです。日々の活動も人間関係も狭まってきます。
私も30代のころから持ち物をコンパクトにして、都会、田舎、海外……と数年おきに移り住んできました。動くために、コンパクトに暮らしているようなもの。物書きを続けていくためにも、さまざまなものに触れたいという気持ちがありました。
どんな仕事をしていても、限られた環境や人間関係のなかだけでは、感性も鈍くなり、考え方も凝り固まって、思い込みにとらわれるようになるものです。
自分が病気になったときは、「欲を出さず、これでいいじゃないか」という思いがわいてくることもありました。でも、もう一人の自分がこうささやくのです。「小さくまとまろうとするなよ」と。
きっとまだ自分をあきらめ切れず、限界に達していないのでしょう。そして、なにかの衝動に突き動かされて、また新しい扉を開けてしまう。心地いい場所を離れてでも、突き進もうとする思いには忠実でありたいと思うのです。
「老後は年金暮らし」は最後にとっておいて、「自分はどこまでできるのか」と挑戦したり、「面白いことをやってやろう」と冒険したりしたほうが楽しいではありませんか。