人に注目されるために物を買う心理
人をうらやましがらせるためにお金を使うというのは、SNSで投稿するために旅行や飲食をすることだけではありません。物を買うことでもそういう心理はあるでしょう。
たとえば高価なブランド物のバッグや値段の高い時計を買ったりすることがあります。もちろん自分が好きなデザインや材質であるとか、そのブランドの製品の品質がよいので気に入ったということで買うのであれば、それは結構なことです。
ところが、高級なブランド物を身に付けて自分が注目されるということを期待するのであれば、それはほとんど意味がないと思います。なぜなら、そもそも自分が思うほど人はあなたのことを見ていないし、気にもかけてはいないからです。
私は定年後に年賀状を出すのをすべて廃止したのですが、ある時、昔同じ部署で仕事をした仲間と集まった時に、年賀状を出していない非礼を詫びたところ、私が年賀状を出していないということに誰1人として気付いていなかったのです(笑)。それぐらい誰も人のことは気にしないのです。
したがって、その品物を持った時に、他人からどれぐらい注目されるだろうか、自分のことをどう見るだろうか、というのは、あくまでも自分の想像の産物にすぎません。それはおそらく、他人の持っているものを見てうらやましく感じる気持ちが自分にあるから、逆に自分がそれを持っていれば人が注目してくれるはずだ、と想像するのでしょう。ということは、人にうらやましく感じてもらいたいという気持ちの強い人は、自分もまた人のことをうらやむ気持ちが強い人なのだと思います。
私は、基本的に“人との比較”のためにお金を使うべきではないと思います。なぜならそれはキリがないからです。「自分の心の満足が得られるのなら、ブランド物を買って見せびらかしてもいいじゃないか」という人もいるでしょう。でもそうやって高価な品を買った翌日に、また他の人がもっと高価なものを身に付けている場面に出くわしたらどうでしょう。おそらくそれまでの優越感や幸福感は消えてしまうに違いありません。
そうやって、もっとよいものを、もっと高いものをと追いかけていくと、本当にキリがなくなってしまうのです。