BRICsから“R”が消えた経緯を振り返る

2023年5月現在、BRICsの4カ国のうち、ロシアを除く3カ国はOECDの「主要パートナー国」としてOECDの組織内で行われる政策議論に参加している。他方、ロシアは1996年に加盟申請を行い、2007年から加盟審査プロセスも開始されたものの、2014年のロシアによる一方的なクリミアの「併合」を受けて凍結。その後、2022年のウクライナ侵攻を受け、正式に加盟審査プロセスが終了し、完全に「非加盟国」となった。

その後ロシアは、ウクライナ侵攻をめぐる国際的な制裁を受け、金融市場からも事実上の撤退を余儀なくされた。主要インデックスからの除外がその一例だ。

インデックスファンドのベンチマークでもおなじみのMSCI指数の算出元であるMSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)社は、2022年3月9日の取引終了後にロシア株式を新興国(エマージング)から除外した。この時は「フロンティア」(「エマージング」に採用されていない国のうち、成長の伸びしろがあり、かつ外国人投資家が投資可能な国々)よりもさらに下に位置する「スタンドアローン」(資本移動に規制があり流動性も極めて低い「孤立した」市場)へと二段階降格がなされたのだが、今年3月にはついに「スタンドアローン」からも除外され、MSCI社のカバレッジから完全に外れた。

 

BRICs諸国を投資対象とする投資信託も、国際金融市場におけるロシア関連銘柄の取引が困難になっている実情を鑑み、すでにロシア関連資産を実質ゼロ評価としている。また、直近ではHSBCアセットマネジメントとシュローダー・インベストメント・マネジメントが、以下のファンドについて、投資対象国からロシアを除外するとともにファンド名を変更した。

・「HSBC BRICs ファンド」→「HSBC BICs ファンド」
・「HSBC 新BRICs ファンド」→「HSBC 新BICs ファンド」
・「シュローダーBRICs株式ファンド」→「シュローダーBICs株式ファンド」

以上の通り、約20年の年月を経てBRICsからついに“R”が除外された一方、中国とインドは躍進を遂げ、「新興国」の勢力図も大きく変わった。ブラジルに関しては評価が分かれるところだが、少なくとも投資信託を通じた投資対象として見た場合、今や「新興国」は事実上、中国とインドを指すと言っても決して過言ではない。ファンドの本数で見ても、両国に関しては十分な選択肢が用意されている。