60歳代~70歳代の資産運用の狙い

もちろん本人が保有している金融資産の額にもよりますが、一定水準の金融資産を保有している60代、70代のお客様に対しては、資産をさらに増やすための投資商品を勧める必要はないと考えられます。

なぜなら、70歳で金融資産の保有額が3000万円あるような人が、この3000万円をさらに4000万円、5000万円に増やす必要はほぼないからです。むしろ、そこまでリスクを取るくらいであれば、大きなキャピタルゲインは狙えなくとも、安定的したインカムゲインが得られる金融商品を多く保有した方がいいでしょう。

安定的したインカムゲインの例として、仮に3000万円の投資元本に対して年4%の利回りを確保できたとすると、年間120万円の利子・配当所得が得られます。年間120万円ということは、月10万円の所得が公的年金以外に確保できるということです。もしも、年5%の利回りを確保できたとすれば、利子・配当所得は年間150万円。月12万5000円が得られます。

月にどの程度お金が必要かは各々が求める生活レベルによりますが、20代からしっかり厚生年金に加入している人なら、公的年金に加え、毎月10~12万円程度の利子・配当所得が得られれば、70歳以降の生活費をそれほど心配する必要はないでしょう。

このように考えると、すでに一定の金融資産を保有する高齢者の資産運用は、やはりキャピタルゲイン狙いではなくインカムゲイン狙いにすべきだと言えます。

したがって、金融機関のアドバイザーが、資産運用アドバイスを求めるお客様を十把一絡げにし、過去の運用成績、つまり値上がり率の高い投資信託を勧める助言をしていたとすれば、いささかピント外れのアドバイスになっている恐れがあるのです。