高齢者の資産運用で留意しておくべきことには、どんなことがあるのでしょうか。年代とともに変化する「資産運用の狙い」について解説します。

20歳代~40歳代の資産運用の狙い

金融機関でお客様の資産運用アドバイスに携わる人たちは、表向きは「お客様の資産をいかに増やすか」という点でアドバイスをしていると思います。

実際、銀行や証券会社の店頭では、ある投資信託の説明書をお客様に差し出し、「この投資信託は過去、とても高い運用パフォーマンスを上げています。ぜひともご検討ください」などと説明するアドバイザーが大勢います。また、マネー関連のコンテンツを見ても、いかに資産の総額を増やすかという点に重きを置いた内容が大半を占めています。

もちろん、これから資産を作る世代である資産形成層にとっては、その方がよいでしょう。資産形成層にあたる20歳代から40歳代くらいまでは何かと物入りです。また、さまざまなライフイベントに必要なお金を準備しつつ、自分自身の老後に向けた資産形成も進める必要があります。

金融広報中央委員会が毎年行っている「家計の金融行動に関する世論調査(二人以上世帯)」(令和4年調査結果)によると、20歳代から40歳代で金融資産を保有している人の比率は、次の通りでした。

<20歳代から40歳代で金融資産を保有している人の比率>

20歳代・・・・・・64.3%
30歳代・・・・・・76.1%
40歳代・・・・・・73.9%

出所:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査(二人以上世帯)」(令和4年調査結果)

20歳代はまだ働き始めたばかりなので、金融資産無保有世帯があるのは仕方のないことですが、30歳代以降はいよいよ本格的に資産形成をしなければならない年代でもあります。

では、金融資産を保有している世帯では、平均の保有額はいくらになるのでしょうか。

<平均保有額>

20歳代・・・・・・339万円
30歳代・・・・・・697万円
40歳代・・・・・・1132万円

出所:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査(二人以上世帯)」(令和4年調査結果)

上記は平均値なので、どうしても保有額の大きい人の数字に引っ張られてしまっている傾向があります。実感としてはもう少し低めの数字になるでしょう。

それはともかく、20歳代で339万円という金融資産を保有している人たちは、それで満足することなく、さらに金額を積み上げていく必要があります。言うまでも無く、高齢になって自分自身が稼げなくなった時に、公的年金に加えて、それまでの蓄えを取り崩し、生活費に充てる必要があるからです。

当然、保有している金融資産の額が大きくなればなるほど、老後の生活に対する不安感も薄らぎますから、資産形成をする人たちは何とかして少しでも保有している金融資産の額を増やそうとします。だからこそ金融機関のアドバイザーも、高いリターンが期待できる投資商品を勧めるのです。