日本のプレシニア・シニア層にとって、「投資」は資産形成の一環として重要なものだという認識がある一方で、そこに楽しさ・やりがいを感じている人は極端に少ないようです。原因は一体どこにあるのでしょうか?
50代~70代の投資実態に関する調査
投資信託協会が「投資信託に関するアンケート調査(プレシニア・シニア調査)」を発表しました。調査対象となっているプレシニア層というのはシニア世代に入る手前の層のことです。一般的には40代後半から50代を指すようですが、本調査では50代をプレシニア層、60歳から79歳までをシニア層として調査しています。
調査の目的は次の3つです。
①プレシニア・シニア層を中心に投資実態・マインドを把握し、老後の生活満足度を高めるような資産運用・投資信託利用の促進に資する資料とする
②プレシニア・シニア層の投資意識・課題から、現役世代における老後の資産形成への知見を得る
③調査結果を協会会員、各種研究機関、メディア等に広く還元し、制度改正に活用する
また、調査は昨年10月25日から10月31日までの期間で実施されました。サンプル数は全国3000サンプルです。
「資産を使い切って人生を終える」は可能か?
調査結果でまず気になったのは、世帯の金融資産評価額平均です。平均額なので、どうしても貯蓄額の多い人の方に引っ張られるのはともかく、男女とも高齢になるほど保有している金融資産の額が大きくなっています。
例えば男性の場合、プレシニア層である50~54歳の平均額は1689.0万円で、55~59歳が2478.4万円。これに対してシニア層である75~79歳で2942.8万円もあります。
女性の場合も、50~54歳が1485.4万円で、55~59歳が2251.1万円ですが、75~79歳になると3079.2万円になります。
同調査では、金融資産に占める預金比率が男女ともに比較的高いこと、男性に比べて女性の方が預金比率が高い点を指摘していますが、年齢層が上がるにつれて世帯の金融資産評価額平均が高くなる点については、どう考えるべきか興味のあるところです。
男女の平均寿命は、厚生労働省が『生命表(加工統計)』(令和3年)で公表した数字によると、男性が81.47歳、女性が87.57歳です。
例えば79歳の男性が3000万円近い金融資産を保有しているとして、平均寿命までの年数を考えると2.47年です。仮にこの男性が平均寿命まで生きるとしたら、恐らく保有している金融資産の大半を使わずに人生を終えることになります。
「自分の葬儀代だけを残して死ぬのが理想」と言う主張は多く見られますが、なかなかそれを実行するのは難しい現実を、数字は物語っているようです。