個人には「今」が良いチャンスかも?

同レポートでは、「J-REITは慎重に上値を探るものと想定します」という見通しを立てていますが、ネガティブ材料である信用不安や長期金利の上昇は、まさに足元で起こっている事象であるのに対し、ポジティブ材料は「そうなるかもしれないけれども、ならないかもしれない」程度の期待感であるため、ややネガティブ材料の方が強いようにも思えます。

現に東証REIT指数の値動きを見ると、2020年3月19日のコロナショックで1138.04ポイントまで急落した後、2021年7月13日には2200.02ポイントまで回復したものの、そこからは下落基調が続き、今年3月20日は1746.05ポイントまで下げています。

とはいえ、この調整局面は、個人がJ-REITに投資するには良いチャンスかもしれません。分配金利回りが上昇するのと同時に、NAV倍率が低下傾向をたどっており、J-REIT市場全般に割安感が高まりつつあるからです。

NAV倍率とは、J-REITの1口あたり純資産価格に対して、投資口価格が何倍まで買われているのかを示すもので、株式で言うPBRのようなものです。基本的に1.0倍だと、J-REITに組み入れられている物件の価値に対し、投資口価格が同等に評価されていることになり、1.0倍を下回ると、組入物件の価値に対し、投資口価格が割安に評価されていることになります。

同レポートによると、2003年3月末から2023年3月末までのNAV倍率の過去平均値は1.15倍ですが、これを19カ月連続で下回り、3月末のそれは0.93倍まで低下しているということです。

このように、分配金利回りとNAV倍率の両方から見ると、現状ではJ-REIT市場は割安水準にあると思われます。

個別銘柄を見ても、J-REIT市場が開設された当初から上場されている、「日本ビルファンド投資法人」の分配金利回りが4.13%(2023年4月10日時点)です。

同投資法人の分配金利回りは、リーマンショック前に一時期、2%を割り込んで1.9%台まで低下したこともありました。それだけ投資口価格が上昇したわけですが、今は逆に調整局面にあり、その分だけ分配金利回りが上昇しています。

同投資法人はS&Pの長期会社格付でA+、R&Iの発行体格付でAAを取得しています。全上場銘柄のなかでも最上位に位置する格付を取得しているJ-REITの分配金利回りが4.13%ですから、「高めの分配金を長期的に取得し続けていきたい」という運用ニーズには向いています。