株式の短期売買は、ほんとうは「マイナスサムゲーム」

ゲームの種類はゼロサムゲーム以外にもあります。参加者全員の損得の合計がマイナスになる「マイナスサムゲーム」と、参加者全員の損得の合計がプラスになる「プラスサムゲーム」です。

マイナスサムゲームでは、参加者はゲームをやればやるほど損をしていきます。ものすごくうまい人は勝ち続けられるかもしれませんが、ほとんどの人が損をしてしまうゲームです。

そしてついさっきゼロサムゲームだと言った短期売買は、ほんとうはマイナスサムゲームだとしたら……おどろきますか?

株式の短期売買の損得についてこまかく見ていくと、売買をする時に、わずかですが証券会社に手数料を支払います。つまり、参加者が売買をすればするほど、株式市場の価値が少しずつ、第三者(ゲームに参加していない人)である証券会社にこぼれ落ちてしまうのです。

手数料の分だけ、損をした人はさらに少し損が増え、得をした人は少し得が削られてしまいます。さらに、株式投資で得たもうけには税金がかかり、利益の20.315%が国や地域にこぼれ落ちてしまいます。100万円のもうけが出ても、そのうち20万3150円はとられてしまうのです。

このように、売買の手数料と税金を考えると、株式の短期売買は実際にはゼロサムゲームではなく、マイナスサムゲーム(上図)だと言えそうです。ということは、株式の短期売買は、自分が絶対にうまいという自信がない限り、やればやるほど損をする可能性が高いことになります。

株式投資は楽しく知的なゲームです。短期売買でも、ライバルである他の参加者とのかけひきを楽しむために、趣味で行なう分には悪くありません。

ただし、資産形成を着実にしていきたい場合は、小さな金額にとどめておいた方がよいでしょう。トランプゲームやギャンブルをするのと何も変わらないということは、覚えておいてください。