受給者の中で「遺族厚生年金を受ける妻」が圧倒的に多い
優先順位の高い配偶者について、若くして亡くなって18歳年度末までの子がいることが少ないことから、遺族基礎年金受給者は全体的に少なく、その受給者のうち妻は5万8000人、夫は1万1000人となっています(前掲調査より。いずれも「基礎年金のみ」と「基礎年金と厚生年金の両方」の受給者数の合計)。
これに対し、子がいることが条件ではない遺族厚生年金のほうが支給されることが多く、夫に先述の年齢制限などがあって、圧倒的に妻が受給する可能性が高くなっているのが実情です。
実際、遺族厚生年金(旧厚年法の遺族年金受給者も含む)のみで受給する妻は522万2000人にのぼります(前掲調査より)。高齢の夫が死亡した際、子は18歳年度末をとうに過ぎ(40代、50代を迎えている)、夫と同じく高齢の妻が遺族厚生年金を受給するというパターンが最も多いと言えます。
遺族厚生年金で受給する妻の圧倒的な多さから、女性の年金、サラリーマンの夫亡き後の妻の年金としてイメージがされることになっていると言えます。
つまり、冒頭の「遺族年金と聞くと、女性が受ける年金としてイメージされる方も少なくないようですが、真偽のほどは?」の問いに対する答えをまとめとしてお示しすると、「実際に遺族年金の受給者は女性が多数。ルール上は男性も受け取れるものの、年齢要件や男性側の老齢厚生年金との兼ね合いで、実際に遺族年金を受給するケースは少ない」となります。
現状の遺族年金には時代錯誤な面も…今後の改正に注目
ただ、女性の社会進出や共働き家庭の増加にともなって、この「受給者の大部分がサラリーマンの夫を亡くした妻」となるような制度は、時代に合っていないのではという声も上がっています。
現在の年金制度は1986年4月に施行されたのですが、当時は「サラリーマンの夫と専業主婦の妻」の世帯が多くを占めていました。そのため遺族年金もそのような前提で設計され、一部改正はあったものの、多くは現在も継続していることが主な要因です。
しかし、共働き家庭の増加はおそらく不可逆的な変化でしょうから、遺族年金のほうが時代に合わせて変わっていくべきという声もうなずけます。
また実際にそんな声に応じて、男性に対して遺族年金の拡充が図られている部分もあります。遺族基礎年金の対象遺族は2014年3月までは「子のある妻」か「子」に限定されていました。それが2014年4月から「子のある配偶者」か「子」になりました。つまり、遺族である配偶者に妻だけでなく夫も含まれるようになり、母子家庭だけでなく、父子家庭にも支給されるようになっています。遺族厚生年金と異なり遺族基礎年金を受ける夫については年齢制限がありませんが、妻死亡当時、夫が55歳以上であれば、60歳未満でも遺族基礎年金だけでなく、遺族厚生年金も併せて受給できます。
ただし、夫が受給するため、遺族厚生年金への加算である寡婦加算はなく、依然として妻との制度上の差があります。
まずは遺族年金の制度を理解して、そのうえで、今後どのような改正がされるかにも注目していくとよいでしょう。