通貨そのものと、外国株や外国籍投信を持つことの違い
事実、米ドル/円の長期トレンドを見ると、1987年から今に至るまで、その為替レートは1米ドル=70円から150円の範囲で推移しています。非常に広いレンジではありますが、長期的なチャートを見ると、大体1米ドル=110円が最も居心地の良い水準であり、何か大きな経済イベントが生じた時、1米ドル=70円、もしくは1米ドル=150円に向かってトレンドが生じます。今回も、1米ドル=150円にタッチした後、1米ドル=127円台まで米ドル高が修正されてきました。
では、なぜ円は、1971年の1米ドル=360円から、1995年の1米ドル=80円割れまで、24年にもわたって円高トレンドを維持できたのでしょうか。この疑問をある機関投資家の運用責任者に聞いたところ、「それは日本が新興国だったから」という回答でした。
バブル経済が崩壊したとはいえ、まだその余韻を引き摺っている1995年にかけて、日本は新興国から先進国の仲間入りを果たし、GDPで米国に次ぐ世界第2位の規模にまで成長しました。結果、日本円は米ドルに対して大きく上昇しました。そこまでの米ドル/円は、先進国通貨対新興国通貨であり、それ以降は先進国通貨対先進国通貨の関係で、為替レートが形成されていると考えられます。
だとすると、延々と米ドル高、あるいは円高が進む可能性は考えにくく、両国の通貨間で長期トレンドは発生しないと考えられます。仮にそういう事態が生じるとしたら、それは米国か日本のいずれかが、先進国の座から滑り落ちる時であるというのが、その運用責任者の解釈です。
米ドルと円のレートがこれからもボックス圏で推移するとしたら、長期トレンドによるキャピタルゲインは得られず、あくまでもボックス圏の中で上がるか、下がるかを当てるゲームになります。つまり為替の値動きで利益を得るFXなどは、基本的に投資とは言えません。これは「外貨投機」と言うべきでしょう。
ただし外国株式への投資のように、あくまでも企業の付加価値を得るのが主で、為替変動によるリターンのブレが従である場合は、「外貨投資」であると考えられます。その点で、通貨そのものを売買するのか、それとも外国株式や外国籍投資信託を保有するうえで結果的に外貨を持つことになるのかを、分けて考える必要があるのです。