先進国同士の為替レートは、いずれ調整される
外貨投資というと、何となく「外貨を長期で持ち続けることによってリターンが得られる」と考える人は多いのではないでしょうか。だから金融機関も、輸入インフレリスクを最小限に抑えるための分散投資という名目で、外貨投資の必要性を打ち出し、外貨預金や外国債券、外貨MMF、外国株式などに資金を誘導しようとしているのだと思います。
でも、外貨投資を考える際には、通貨そのものを売買するのか、それとも結果的に外貨建て資産を持つことになるけれども、それは外国株式や外国籍投資信託を保有するためなのかを、分けて考える必要があります。
そもそも投資とは何かというと、付加価値を生み出すものに資金を投じることです。たとえば株式投資であれば、企業が生み出す付加価値を買うのと同義です。企業活動によって利益を生み出し、それを配当金という形で株主に分配してくれます。そして、売上と利益が伸びれば、その分だけ配当金も決算ごとに、徐々に増えていきます。まさに企業が生み出す付加価値が高まっている証拠です。
これに対して、外貨と称される「通貨」は、何も生み出しません。たとえばお財布の中に1万円札を入れておき、それが時間の経過と共に1万1000円、1万2000円と増えるようなことはありません。つまり通貨そのものは一切、付加価値を生まないのです。
そうであるにも関わらず、「外貨投資」などと称されるのは、為替レートの値動きによって生じるキャピタルゲインを得られる可能性があるからです。
しかし、外貨投資で得られるキャピタルゲインは、決して投資対象通貨の付加価値が向上したことで生じるものではありません。なぜなら、為替レートは異なる2通貨の交換比率に過ぎないからです。
単なる交換比率に過ぎない為替レートが、通貨高もしくは通貨安の一方向にずっと進み続けることはありません。もちろん一方が新興国通貨、もう一方が先進国通貨で、新興国通貨を発行している国の経済力が、先進国通貨を発行している国の経済力を凌駕するところまで高まれば、新興国通貨が長期トレンドで上昇することはありえますが、米ドルと円のように、先進国同士の通貨の為替レートが、長期的に一方向に進んだりはしないのです。