多くの個人投資家にとって、嬉しいサプライズとなった「NISA拡充」。2024年のスタートを前に、新NISAを自身の資産形成にどう活かしていくかを考えることが必須といえそうだ。今回は、そんな新NISA実現のキーパーソンである、自民党財務金融部会長・中西健治氏へのインタビューを公開する(前後編の前編)。

※本稿はfinasee Pro「NISA大変革 永田町のキーパーソンに聞く 自民党財務金融部会長・中西健治氏」(2022年12月28日掲載)を再編集したものです。

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政府は2024年1月にNISAを恒久化し、その投資枠を年360万円に拡大する。自民党税制調査会(税調)のメンバーや公明党からは「富裕層への優遇になる」との慎重論が相次いだなか、元JPモルガン証券副社長で自民党財務金融部会長の中西健治氏らが制度を拡充する必要性を力説し、与党内の方向をまとめた経緯があった。その中西氏が党内論議を振り返り、新NISAが日本の金融市場に及ぼすインパクトについて語った。

なかにし・けんじ 1964年生まれ。東大卒、JPモルガン証券へ。2006年に副社長。10年、参院議員。21年より衆院議員(神奈川3区)。自民麻生派。

――NISA改革への熱意は永田町随一とも言われます。

政府が「貯蓄から投資へ」と唱え続けても、なかなか「笛吹けど踊らず」の状況から脱せず、忸怩(じくじ)たる思いでした。私が金融から政治の道へと進んだ2010年ごろは、日本の個人金融資産の規模が1500兆円ほど。その後も右肩上がりに増えてゆき、新型コロナ禍で消費が低迷した影響もあって、現在では2000兆円を突破しています。そのうち半分が預貯金で占められているのは、日本にとって「もったいない」と言わざるを得ません。

これまでの30年間はデフレでした。あらゆる金融資産のなかでも現金の価値が大きかったので、現預金という形で家計が蓄えるのも合理的な選択といえます。ところが世界経済のインフレが加速し、日銀も(2022年)12月20日に金融緩和政策の事実上の転換を打ち出しました。インフレになれば現金での貯蓄は損になります。例えば株式に投資するのも選択肢のうちに入れる必要が出てきます。

コロナで飲食業や小売業などが苦境に陥った一方で、国の税収は過去最高になっています。GDPは低成長が続くのに税収はバブル期を上回っているということは、収益が上がっている国内企業がたくさんあるということです。その恩恵を家計が受けられるようにしたい。もちろん賃上げという形でも応えていかなければなりませんが、家計が金融資産を持っていれば、そちらからも利潤を得られます。そういう好循環を何とか実現していきたいです。