――自民党の財務金融部会長として、NISA改革の党内論議を率いてきました。

政治家13年目となる今年、志願して党の財務金融部会長に就きました。岸田文雄首相が「資産所得倍増プラン」を掲げた折ですので、それに見合った仕事をしたいという思いから、年末の自民党税調では一般NISAを大幅に拡充する必要性を繰り返し訴えました。税調の平場の総会は国会議員が200何十人も集まりますが、部会長という立場なら何度でも発言できます。そこで大演説をぶった(笑)。財金部会の他のメンバーも1回しか発言が許されないなか、それでもみなさんが挙手してNISAについて発言してくれました。国会議員というのは様々な団体から陳情を受ける存在ですから、年に1度の税調の場では他にも発言したいテーマがあったはずです。それでも財金部会のメンバーや部会に近い人たちは、NISAの優遇を広げるべきだという方向で全員が足並みをそろえ、ワンボイスになっていました。

今回の改正で大きかったのは、一般NISAの後継として「成長投資枠」を勝ち取れたことです。私は「一般NISAを発展させた制度が絶対に不可欠です」と訴え続けてきました。理由は2つあります。まず個人のライフステージを考えたときに、まとまった額の退職金を得たシニア層が今さら「つみたてNISA」を活用するとは考えにくいこと。もうひとつの理由は、つみたてNISAが長期分散投資を主眼としているため、つみたてNISA経由で買われる投資信託が海外バランス型に偏りがちなことです。これでは国内の成長投資に資金が回っていきません。その点、一般NISAであれば国内株への投資が非常に多い。日本企業の成長原資となるには、やはり一般NISA的な制度が必要になってきます。このような話を税調の場で丁寧に説明していきました。

――与党内には一般NISAの拡大に懐疑的な見方もありました。

自民税調のインナー(ベテラン幹部)や公明党には2つの懸念があったようです。投資枠の拡大が「お金持ちへの優遇」と批判されかねないとの意見と、低位株への投資に使われて万馬券のように儲かった利益に課税しないのは本末転倒だという意見です。私のように金融の世界にいた人間からすれば、この程度の優遇で超富裕層が動くとは思えません。中所得層への恩恵のほうが、はるかに大きい。なかにはNISAを使って特殊な買い方をする人はいるかもしれませんが、それは別にNISAに限った話ではないですし、それをもって多くの方の資産形成に役立つ制度を否定する論理にはならないと主張しました。何とか消極的な方々を説得できました。