ドイツ依存が強まるEU経済

2016年の国民投票から起こったイギリスのEU離脱問題(いわゆるブレグジット)は、EU発足以来の大事件でした。これにより、EUは重要な資金源を失うことになります。

EUでは「多年次財政枠組み(MFF:Multiannual Financial Framework)」と呼ばれる7年単位の予算が組まれます。主に加盟国の拠出金によって運営され、経済規模が大きい国ほど多くのお金を拠出する仕組みです。

イギリスは2020年の予算までは多くの資金を供給していました。しかし同国がEUを離脱したため、残りの主要国が拠出割合を増やし、イギリスの穴を埋めています。特にEU圏で最大の経済規模を持つドイツは、より大きな負担を強いられるようになりました。

【EU主要5カ国の拠出割合】

欧州委員会「EU spending and revenue 2014-2020」および「EU spending and revenue 2021-2027」より著者作成

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EU予算だけでなく、実体経済でもドイツの立場が強くなっています。主要5カ国におけるドイツの経済規模はおよそ3割程度でしたが、イギリスが離脱したことで残りの4カ国に対する割合は4割を超えることとなりました。EUにおけるドイツの役割は、ますます重要なものになっています。

【EU主要5カ国の名目GDP比(米ドルベース)】

IMF「World Economic Outlook Database(October 2022)」より著者作成

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執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。