「絶対もうかる投資」とはスポーツブックアービトラージ

筆者がその投資法についてうかがったところ、道代さんが「絶対もうかる投資」として勧められたのは「スポーツブックアービトラージ」という投資スキームのようでした。

海外には政府公認のブックメーカー(賭け事を運営する会社)があり、サッカーや野球などの勝敗予想の賭けができます。「スポーツブックアービトラージ」とは、複数のブックメーカーが出したオッズ(倍率)から、確実に利益が出る組み合わせに賭け、利益を得る手法です。

たとえば、AとBの試合の勝敗予想をするとします。

同じ試合に異なるオッズを出していたブックメーカーXのオッズとブックメーカーYに、次のように賭けます(引き分けはなし)。

 

XでAに賭け、YでBに賭けていますので、A・Bのどちらが勝っても利益が得られるわけです。

具体的にそれぞれ計算してみますと……

●Aが勝った場合
1万4000円(7000円×2/ブックメーカーXで得られるお金)-7000円(Xでの賭け金)-3000円(Yでの賭け金)
=最終的に4000円のもうけ

●Bが勝った場合
1万6500円(3000円×5.5/ブックメーカーYで得られるお金利益)-7000(Xでの賭け金)-3000円(Yでの賭け金)
=最終的に6500円のもうけ

※手数料等は考慮していません。

一般的にブックメーカーでは両建て(両方に賭ける)は禁じられています。そこで、異なる複数のブックメーカーに賭けるのです。このような賭け方で“理論上”は利益を出せるのが、スポーツブックアービトラージです。

確実に利益が出るなら、ぜひとも投資したいと思う人もいるかもしれません。しかし、あまりにもツッコミどころが満載です。

まず、ほとんどのブックメーカーがアービトラージを禁止していて、発覚すれば利用できなくなります。また、日本から海外のブックメーカーで賭けに参加することは明確に禁じられてはいませんが、グレーといえます。さらにこの投資の勧誘自体も違法である可能性が高いでしょう。

日本では過去にスポーツブックアービトラージの投資詐欺事件が起きており、極めて危険と言わざるを得ません。

道代さんはスポーツブックアービトラージの仕組みなどまるで理解しておらず、「理論上、確実にもうかる」といった、うたい文句に魅力を感じ、投資したいと思ったそうです。投資をやるかやらないかは最終的には本人が決めることです。しかし、この件に関しては「やめましょう」と言うほかありませんでした。
 

●このスポーツアービトラージの話より前に、相談者はすでに驚きの金融商品に手を出していた事実も発覚。後編『「日本で投資するより高利回り」のうたい文句はワナ!? 「オフショア投資」に潜む盲点』にて詳細が明らかに。