1億円の資産を築いても働き続ける理由

約束の時間に事務所に現われた道代さんは、オフイスカジュアルといった趣のラフすぎないファッションがよく似合う快活な女性です。おそらく高級ブランドなのでしょうが、ご本人のキャラクターからか、嫌味が全くありません。「こんにちは、よろしくお願いします」という挨拶の第一声がハッとするほど活力があり、長年ビジネスで培った年輪が感じられます。

挨拶を済ませた後、道代さんは自身の身の上話から始めました。

「私は元夫と離婚してからは、娘を育てるために必死で働きました。何の資格もなかったので化粧品販売を始め、独立して会社にするまでになったのです。離婚した当時は今より景気が良かったので、行動すればしただけ結果が出たこともありましたね。娘も結婚して孫が生まれ、昔のように稼ぐ必要はなくなりました。1億円近い資産もあるので、本当はもう働かなくていいかとも思っているのですが、仕事をしているといろいろと“しがらみ”もあり、簡単にはやめられません」

見るからにエネルギッシュな人なので、引退とはほど遠いだろうと筆者も思いました。また、ご本人からも“しがらみ”という言葉がありましたが、1人で事業を軌道に乗せ、一定の成功を収めた裏には、多様な人付き合いや誘いがあるのだろうと感じます。

そして、道代さんから本題が切り出されました。

「実は最近、絶対もうかる投資があると勧められて、あるセミナーに行きました。聞いてみると、もうかりそうだと思う反面、怪しい感じもします。でも、私の気持ちとしては、投資したいと思っています。そこで、投資しても大丈夫かどうかをご相談したくて」

“絶対もうかる”……何やら、危険な香りのする案件となりました。