前回の本連載(資産所得倍増プランで「新NISA」はどうなる? 積立の意外な盲点にも注意)でも取り上げた、岸田政権「資産所得倍増プラン」の柱の1つ、「新NISA」の詳細が「2023年度税制改正大綱」の公表を以て明らかになった。そこで今回は、現時点で判明している新制度の詳細をいくつかのポイントに絞って解説するとともに、2023年中に備えておきたいことについて解説する。
いよいよ明らかになった「新NISA」の詳細
まずは、現行制度と新NISAの新旧比較を、3つのポイントに沿って見ていこう。
ポイント①:制度の恒久化と非課税期間の無期限化
もともとNISAは租税特別措置として時限的に導入されたため、一般NISAは2023年まで、つみたてNISAは2042年までと、利用できる期間が限定されていた。口座を開設する時期によっては非課税枠に差が出てしまうことが指摘されていたが、このたび制度自体が恒久化されることとなり、今後、こうした不公平感は解消される。
また、現状一般NISAでは、5年の非課税期間終了後に非課税期間を延長するには、翌年の枠を使用し、資産を移し替える「ロールオーバー」と呼ばれる手続きが必要になるが、非課税期間が無期限化されたことにより、ロールオーバーの煩雑な手続きをしなくても済むようになる。
ポイント②:年間投資枠(非課税限度額)の引き上げ
現行のNISA制度では「一般」と「つみたて」の併用はできず、いずれかを選択しなければならないが、新NISAは「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つで構成され、実質的に両者の併用が可能になる。年間投資枠は「つみたて投資枠」が年120万円、「成長投資枠」が年240万円となり、合計で年360万円まで投資上限額が引き上がる。それぞれの枠の使用方法と対象となる商品については後述する。
ポイント③:生涯非課税限度額の設定
ポイント①と②は、従前から示唆されてきた内容だったが、この「生涯非課税限度額の設定」は新NISA最大の目玉であり、ポジティブサプライズであったと言えよう。
新NISAでは、1人あたり1800万円の「生涯非課税限度額」が設定される。この非課税限度額は文字通り、生涯にわたって利用可能であり、「簿価(=取得価額)」で総枠を管理する。保有する金融商品を売却すると簿価が減少し、枠の再利用が可能となる点が大きなポイントだ。
現行制度は買付金額ベースで総枠が管理されているため、保有商品の売却で空いた投資枠が復活することはなく、再利用もできない。しかし、新制度では投資枠が復活するため、運用商品の見直しや、まとまったお金が必要になったタイミングで引き出すことも含め、ライフイベントに応じた柔軟な対応が可能となる。
また、「成長投資枠」の非課税限度額は1200万円で、1800万円の内数としてカウントされる。この部分は買付方法が積立に限定されないため、まとまった資金の投資に活用することができる。詳しくは後述するが、対象商品には投資信託だけでなく、株式も含まれる。